DeepLという新しい翻訳サービスの実力がGoogle翻訳を凌駕している

translation service 91.デジタル&イノベーション

シリコンバレーに赴任するより前から、けっこう長いことお世話になっているGoogle翻訳

2016年に「ニューラルネットワーク」を活用して翻訳の精度が劇的に向上したときは大いに感動したものです。

検索サービスを軸に、膨大なビッグデータを持つGoogleが作った翻訳サービスですから、これを越えるサービスはもう出ないだろうと思っていました。

が、しかし!

最近のニュースでGoogleをも凌ぐ翻訳サービスがあるというではありませんか。

その名も「DeepL」。

ディープ・ラーニングみたいな社名です。

ということで今回は、DeepLの翻訳を使ってみた感想を書き記しておきたいと思います。

DeepLとは

みんな大好きWikipediaを基に、DeepLの基本情報をまとめておきましょう。

DeepLの基本情報
  • DeepL翻訳は、DeepL社が提供している翻訳サービス
  • 同社はディープラーニング(深層学習)を軸に、言語向けの人工知能システム
  • 2009年にドイツのケルンで設立された訳文検索エンジン会社のLingueeが前身
  • 2017年8月に機械翻訳システムDeepL翻訳を公開
  • 2020年3月には日本語と中国語(簡体字)にも対応
  • DeepL翻訳は、ウェブサイトで無償で利用可能
  • 有償プラン「DeepL Pro」(個人利用の場合、月額5.99ユーロより)に登録すれば、オンライン翻訳の文字数制限がなくなるほか、送信されたテキストの訳文を届けると同時に、そのテキストを翻訳完了後すぐに削除する機密性保持機能などを利用可能
  • Microsoft WordやPowerPointの文書などをドラッグ&ドロップして翻訳することも可能

Google翻訳が無料で使える時代に有料プランを打ち出しているわけですから、よほど翻訳の精度が優れているという自信があるのでしょう。

DeepLとGoogleの翻訳精度を比較してみた

ということで、早速DeepLを使ってみましょう。

比較のために、Google翻訳にも同じ文章を入れてみました。

「見せてもらうか、DeepLの英語・日本語翻訳の性能とやらを!」

例文その1:スタートトレックのオープニングのセリフ

1例目は私の好きなスタートレックのオープニングのセリフから。

<原文>

Space: the final frontier.

These are the voyages of the starship Enterprise.

Its continuing mission: to explore strange new worlds.

To seek out new life and new civilizations.

To boldly go where no one has gone before!

<DeepL翻訳>

宇宙:最後のフロンティア。

これらは、宇宙船エンタープライズ号の航海です。

その継続的な使命は、奇妙な新しい世界を探索すること。

新しい生命と文明を求めて誰も行ったことのないところに果敢に行くこと。

<Google翻訳>

スペース:最後のフロンティア。

これらは宇宙船エンタープライズの航海です。

その継続的な使命:

奇妙な新しい世界を探索すること。

新しい人生と新しい文明を探すこと。

これまで誰も行ったことのないところに大胆に行きます!

私はこの翻訳を見て、DeepLの可能性にを見ました。

日本語訳する上で、いくつかの選択肢が考えられる単語が見事に翻訳されています。

たとえば「Space」はDeepLが「宇宙」で正解ですが、Googleは「スペース」とそのまま横文字になっています。

また「New Life」もDeepLは「新しい生命」と正解している一方、Googleは「新しい人生」と別の意味を取ってしまっています。

DeepL、前後の文脈から判断しているのでしょうか、すばらしい精度です。

さらに「Its continuing mission:」のコロンは後に続く3つの「To ~」にかかっているわけですが、DeepLはそれを察してか、「Its continuing mission:」も合わせて4つの文章をうまく2文にまとめています。

Googleの方はコロンもそのままおいて、「To ~」の文章を無難に並列に並べており、「Its continuing mission:」も含め、4つバラバラの文章のままでした。

例文その2:ケネディ大統領の就任演説の一部

続きましては、米国第35代大統領ジョン・F・ケネディの就任演説からの抜粋です。

<原文>

And so, my fellow Americans, ask not what your country can do for you; ask what you can do for your country.

My fellow citizens of the world, ask not what America will do for you, but what together we can do for the freedom of man.

<DeepL翻訳>

だから、同胞のアメリカ人よ、あなたの国があなたのために何をしてくれるかではなく、あなたの国のために何ができるかを尋ねなさい。

世界の同胞である市民の皆さん、アメリカが何をしてくれるかではなく、人間の自由のために何ができるかを一緒に考えてみてください。

<Google翻訳>

そして、私の仲間のアメリカ人は、あなたの国があなたのために何ができるかを尋ねないでください。あなたの国のために何ができるか尋ねてください。

私の仲間の世界市民は、アメリカがあなたのために何をするかではなく、私たちが一緒に人の自由のために何ができるかを尋ねます。

これもDeepLの翻訳が光ります。

And so, my fellow Americans,」のところ、DeepLの翻訳、「だから、同胞のアメリカ人よ、」は就任演説としてふさわしい文章になっています。

一方Google翻訳は「そして、私の仲間のアメリカ人は、」は翻訳エンジンの典型みたいな訳文になってしまっています。

また2文目の「Ask not ~」以下のところ、命令形にもかかわらず、Google翻訳では「~を尋ねます。」とただの現在文になってしまっており、これではせっかくの名演説も台無しです。

例文その3:ニュース番組の天気予報

さて、最後の例は天気予報です。

この例文は、サンフランシスコ・ベイエリアのニュースを伝える「KRON4」の天気予報から取ってきました。

<原文>

Typical morning fog will give us status and overcast around the immediate Bay early today, mixing out to mostly sunny afternoon.

Back to some 90’s today and for tomorrow, but a slow moving system will bring in some minor cooling by midweek.

<DeepL翻訳>

典型的な朝の霧が発生し、今日の早朝には湾の周辺は曇りとなり、午後にはほとんど晴れとなるでしょう。

今日と明日は90度前後の気温に戻るが、ゆっくりとした動きのシステムが週の半ばまでに小幅な冷え込みをもたらすだろう。

<Google翻訳>

典型的な朝の霧は私たちにステータスを与え、今日の早いベイのすぐ近くで曇り、ほとんど晴れた午後に混ざります。

今日と明日の約90年代に戻りますが、システムの動きが遅いため、週半ばまでに多少の冷房が生じます。

見てください、DeepLの翻訳。

午後にはほとんど晴れとなるでしょう。」という語り口、天気予報らしい口調になっていて驚きます。

一方Google翻訳は「ほとんど晴れた午後に混ざります。」となっており、意味が通じません。

またGoogleの「ステータス」や「冷房」といった直訳誤訳も気になります。

いやあ、たった3つの短い文章の翻訳比べでしたが、改めてDeepLのすごさを実感しました。

DeepLのビジネスモデルが非常に気になる

個人向けの有料プランはあるものの、メインはBtoBで稼ぐビジネスモデルではあると思います。

ただ、今はスタートアップとしてベンチャー・キャピタルからの出資で運営されていると思いますが、どれくらい法人企業のニーズを取り込んで事業として成長軌道に乗せられるかは、未知数です。

何よりGoogleがこうした挑戦をどう受け止めるのかが気になります。

それにしてもこれだけプラットフォーマーのGoogle翻訳が広まっている中で、後発組としてスタートアップが殴り込みをかけるのは、実際の事実以上に、何か象徴的なものを感じます。

今後の展開に注目したいと思います。

^U^

ひとことポイント

・DeepLの今後のサービス展開に注目!

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