『10年後に食える仕事、食えない仕事』から聞こえてくる「格差社会」の足音

robot and human 02.キャリア・副業

今回は、渡邉正裕さんの著作『10年後に食える仕事 食えない仕事: AI、ロボット化で変わる職のカタチ』を読んだ所感等についてまとめます。

今日の話を簡単にいうと、「格差社会がすぐそこまで来ているから、今のうちから準備しよう」ということですかね。

『10年後に食える仕事 食えない仕事: AI、ロボット化で変わる職のカタチ』の概要

AI関連の本はあまたありますが、この本はAI・ロボティクスができる作業と、産業や職業との関連性・代替性の有無を、10年というスパンを設定して解き明かしたものです。

AIが仕事に与える影響について、様々なデータや現場の生の声を集めて整理し、体系立てたという意味では、良書でしょう。

ただ、これは個人的な感想ですが、私はシリコンバレーで働いているので、職業柄というのもあり、ものすごく先進的な知見が得られたかというと、そうではないと思いました。

ある程度知っていることの答え合わせをして、「やはりそうだよね」と思ったというのが率直な感想です。

参考までに著者本人による本書の要約部分を引用しておきます。

超・少子高齢化と、経済のグローバル化、求人側と求職側とのスキルの受給ギャップなど、原因は様々あると考えられるが、本書はそんな10年後の日本を見据え、その最大の解決策と目される「デジタルAI(人工知能)経済の発展」によって、日本人の仕事がどう変わるか、その全体像をわかりやすく描き、個々人が「人間ならではの強み」をどう生かしていけばよりよい職業人生を送れるのかを示す¨航路図¨となるものを目指した。

出典:10年後に食える仕事 食えない仕事: AI、ロボット化で変わる職のカタチ

同じく、著者本人による本書の目的も引用しておきます。

ITを中心とするテクノロジー進化で、日本人の仕事はどう変わろうとしているのか。その立体的な視座ーどの職業が、仕事量・賃金水準・雇用について、時間軸でどう変化していくのか、どこに落とし穴、そしてチャンスがあるのかーを提供し、未来を見据えたキャリア設計に寄与するのが、本書の目的である。

出典:10年後に食える仕事 食えない仕事: AI、ロボット化で変わる職のカタチ

2つの引用をまとめると、「私たちが日本という国で、今後のキャリアを設計していく上での航路図となるのが本書である」、といった感じでしょうか。

私たちの働き方に影響するものとは何か

仕事と職業に影響する2要因

著者は私たちの仕事のあり方に影響を及ぼす主因として、「グローバル化」と「テクノロジーの進化」を挙げています。

仕事のあり方に変革をもたらす主要な要因は、「グローバル化(外国人との競争)」と「テクノロジー進化(IT、AI等)」の2つであり、この両者が「人口動態の変化(長寿化、少子高齢化、日本人減少)というベースの上で、政府による政策の影響を受けスピードを増減させつつ、職業の形を変えていく。

出典:10年後に食える仕事 食えない仕事: AI、ロボット化で変わる職のカタチ

これは私もこのブログで常々お伝えしている2項目ですね。

私の場合、「テクノロジーの進化」を「デジタル化」と呼んでいますが。

というか、ここ数年、世の中の識者は働き方に影響するものとして、だいたいこの2つを挙げます。

ただ、著者は前著『10年後に食える仕事、食えない仕事』でグローバル化の影響については語りつくしてしまっているので、この本では主に「テクノロジーの進化」に特化した働き方への影響を説いています。

前著と今回の本は、名前がほぼ一緒で、わかりにくいです。

人間に残る5つの仕事

著者によると、AIやロボティクスが進化しても、人間の仕事として残り続ける仕事が5つあります。

これらは自動化に向かず、少なくとも10年というスパンでは代替されない仕事です。

人間に残る5つの仕事
  • 創造ワーク
  • 感情ワーク
  • 信用ワーク
  • 手先ワーク
  • ボディワーク

AI代替の3要件

AIやロボットが得意とする仕事とはどういうものかをあらわしたのが、AI代替の3要件です。

AI代替の3要件
  • ①業務に必要十分な情報を「デジタル形式」で取得できる
  • ②AIが分析できる範囲内である(指数的爆発を起こさない)
  • ③物理的に執行環境が整備されている

この3要件に当てはまれば、代替は容易ということになり、すなわち現在、当該業務を担っている人は10年以内に失業する可能性が高いということになります。

逆にこの3要件に当てはまらないのが、先ほどの「人間に残る5つの仕事」であり、私たちが目指すべきキャリアの方向と言えます。

今後、AIやロボティクスで失業する人、しない人

では具体的にどういう仕事がAIやロボティクスに代替されてしまうのでしょうか。

この問いに対して、2軸マトリクスで失業の可能性を的確にプロットしたのが、以下の図です。

出典:10年後に食える仕事 食えない仕事: AI、ロボット化で変わる職のカタチ

縦軸は「主に頭脳を必要とするか身体を必要とするか」であり、横軸は「AI代替の3要件が当てはまるか(自動化しやすいか)」になっています。

だいたい2軸マトリクスだと4象限に収まりますが、この図では右下が2つに分かれており、全部で5つの領域があります。

5つの領域
  • AI・ブロックチェーン失業:政策によってしばらく守られるため、直ちにはなくならないが、給与は減っていく領域
  • ロボティクス失業:既得権益に守られない仕事が多いため、急速に代替されていく領域
  • 手先ジョブ:経営層の要求を考慮した政策によって賃金の低い外国人労働者が入ってくるため、「デジタル化」より「グローバル化」の影響が大きい領域で、スキルの身につかない蟻地獄
  • 職人プレミアム:デジタル化されにくいだけでなく、デジタルに強くなくても狙えるため、デジタル嫌いのワーカーの「逃げ場」的領域
  • デジタル・ケンタウロス:「グローバル化」で競争が激化するエリアと日本語に守られたエリアの2つのエリアを持つ、デジタル化で強化される領域

簡単に言えば左側にある職業がAI・ロボティクスに代替されていく可能性が高いから、右側にキャリア・チェンジした方がいいよ、ということですね。

さらに今後、各領域の給与はどうなっていくかを「矢印」でプロットしたのが以下の図です。

出典:10年後に食える仕事 食えない仕事: AI、ロボット化で変わる職のカタチ

左側はもちろん、右肩下がりですが、「ロボティクス失業」の方が「AI・ブロックチェーン失業」より下がり幅は大きいです。

AI・ブロックチェーン失業者の賃金の減少が小さいのは、税理士や会計士にはじまる士業など、既得権益を持つ労働者が多く、政治的圧力も一定程度持っているため、政策的に守られる可能性があるからです。

「手先ジョブ」も右側にありますが、仕事がなくならないからと言って安泰というわけではなく、少し給与が下降線です。

「職人プレミアム」と「デジタル・ケンタウロス」は2極化することをあらわしています。

AI・ロボティクス失業で二極化した先に待つ「格差社会」

先ほど示したマトリクスを見て言えることは、AI・ロボティクスの代替が進むことで、労働者間の給与格差が広がるということです。

かつて中間層を構成していた事務職などの多くのワーカーが業務の自動化により仕事を失い、下位層転落すると、結果として一部の上位層と、圧倒的人数の下位層に分かれることになります。

それを示したのが下の図です。

出典:「10年後に食える仕事 食えない仕事: AI、ロボット化で変わる職のカタチ」を基に一部、図を追加

高度経済成長期には「一億総中流社会」と呼ばれた日本も、テクノロジーの進化で確実にこの格差社会が進行しており、今後さらに格差は広がるのは間違いないでしょう。

著者は、特に未来の志望職種が決まっていない若者にはITエンジニアを勧めています。

確かに、デジタル・ケンタウロスになることが、今後の格差社会での一番安全なルートだとすると、ITエンジニアは正しい選択かもしれません。

個人的には、職人プレミアムも極めれば、差別化要因を発揮して、相当高給取りのプロフェッショナルになれそうな気がします。

いずれにせよ、自分の働き方や業種・職種を、今回ご紹介した図を基に、今一度見直してみるとよいと思います。

^U^

ひとことポイント

・キャリアを見直して、デジタル・ケンタウロスか職人プレミアムを目指そう

コメント

タイトルとURLをコピーしました