前回のエントリーで、トヨタのスマートシティ構想について取り上げました。
トヨタのスマートシティ構想のキモは「MaaS(Mobility as a Service)」、つまり自動運転車が街を縦横無尽に駆け回り、人々の移動の概念を変えることです。
このMaaSが日本に普及すれば、都市のあり方そのものも変わってくるでしょう。
ということで今回は、MaaS時代の都市設計について書き記しておきたいと思います。
便利だった場所は、MaaS時代には不便な場所に
日本の都市部では、長らく大量輸送のインフラとして、鉄道が重視されてきました。
東京首都圏で言えば、山手線を中心円として、JRと私鉄各社が郊外に線路を引き、そこに住宅地や生活インフラを整えることで、路線ごとの生活圏を一つのパッケージとして構築し、運用してきました。
鉄道による通勤を前提としたライフスタイルでは、どれだけ「徒歩」で駅に近いかが重要であり、またそれにより土地の価格が決まっていました。
しかし、MaaSが前提の世界になると、状況は一変します。
徒歩前提で設計された日本の狭い駅前道路は、自動運転時代には「使いづらい」インフラになってしまいます。
MaaS時代に必要なのは適切な道路設計
「MaaS時代には土地の価値観が180度変わる」とはどういうことでしょうか。
以前のエントリーでも取り上げた『10年後に食える仕事、食えない仕事』に、MaaS時代の利便性について述べた箇所があります。
都心部では、駅や病院やショッピングモールなどは密集した「商業地域」にあるのが普通なので、自動運転車は行くことができない。
専用スペースを設けるまでは、近くの幹線道路や住宅地から、少々、歩くことになる。
商業地域に建つマンション、たとえば武蔵小杉駅前にボコボコ建つタワーマンション等も、徒歩で移動するには便利だが、自動運転車に乗るには一苦労だ。
乗れる場所までは歩く必要がある。
郊外住宅地は、自動運転車が利用できる街と、地形的に入り込めない街に分かれる。
2040年以降、いわゆるMaaSで自動運転タクシーが使われ始めると、自動掃除機「ルンバ」が入れる高さを考慮した”ルンバブル”ソファーは販売されているように、自動運転車が利用しやすい街、というのが新しい付加価値になっていく。
出典:10年後に食える仕事 食えない仕事: AI、ロボット化で変わる職のカタチ
ここで指摘されているように、特に道の狭い日本では、従来のような密集地帯での自動運転車の運用は難しいため、MaaS時代には、新しい都市の設計が必要です。
トヨタが工場跡地に一から都市を創る意味もここにあると思います。
つまり、従来とはまったく異なる設計思想で都市を構想する必要があったということです。
実際、トヨタのスマートシティ「ウーブン・シティ」には、3つの道が通ることを前提にしています。
ウーブン・シティの「ウーブン」の意味が「織り込まれた」という意味であり、この都市名にしたのは、「道を織り込む」という意味が込められているということです。
スマートシティの機能を十二分に発揮させるために通す道路は、従来型のものだけでは難しいという判断なのだと思います。
駅近というこれまでの利便性の価値基準は、MaaS時代にはかつてほどは大きな意味を持たなくなるでしょう。
リモートワークの潮流も追い討ち
この流れは、リモートワークの普及と共に加速すると考えられます。
人が集まる必要があるからこそ意味のあった都心・駅近。
これがリモートワーク併用、もしくはリモートワーク前提となってしまえば、価値観の逆流が起こります。
これからは、リモートワーク前提かつ、MaaS前提で、ちょっと郊外に広めの家を持つ。
そんなライフスタイルが当たり前の世の中に、日本も近い将来なるのかもしれません。
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ひとことポイント
・MaaS時代にそなえて、土地に関する価値観を見直そう
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