ジョブ型雇用は「教育機会の提供」をセットにすればうまくいく

education for adult 02.キャリア・副業

以前のエントリーでも取り上げた、最近話題のジョブ型雇用ですが、日本に根づくメンバーシップ型と異なる雇用形態ですから、運用する上でも気をつけるべき点があると考えています。

それが、「教育機会の提供」です。

ということで今回は、ジョブ型雇用と教育の機会について書き記しておきたいと思います。

ジョブ型雇用の特徴

ジョブ型雇用は新しく業務が発生した時や、既存の業務に欠員が出た時に、職務記述書(ジョブ・ディスクリプション)を基に人材の募集を内外にかけて、適切なスキルと経験を有すると考える応募者が自ら手を挙げて立候補し、面談などを経て採用者を決定する制度です。

ジョブ型雇用の特徴として挙げられるのは、「業務に人を割り振る」という点です。

会社のミッションがあり、それを分解すると個別の業務になるので、そこに適切なスキルを持った人を配置するイメージです。

それに対して、従来から日本で続くメンバーシップ型の雇用は、「人に業務を割り振る」という特徴があります。

会社にミッションがあり、そこにはすでに雇われている人がいるので、その人たちに仕事を割り振るイメージです。

ジョブ型雇用は基本的に「欠員の補充」が起点になっているので、通年で発生しますし、また新しいポジションに移動した社員の穴を埋めるために、また欠員の補充のための募集が行われるという、玉突き現象も起こる可能性があります。

これは元々欧米の通年採用、新卒や既卒の概念のないスキルベースの採用、頻繁な転職といった社会的習慣と相性がよく、日本のように基本的には新卒を一括で年一回採用、新卒はポテンシャルベースの採用、終身雇用前提、異動は定期的に一斉に、といった社会的習慣の中では、そういった周辺部分も欧米流に改めるか、日本流の制度に合うようにカスタマイズするなどの工夫が必要でしょう。

ジョブ型雇用は同じポジションにロックインしやすい

さて、日本の従来型の人事制度では、異動の時期になると一斉に人が動きますが、ジョブ型雇用を採用すると、欠員ベースの補充、採用になります。

業容を拡大しない限りにおいては、空きが出なければ、基本的には募集は出ないので、同じ人が何年、何十年と同じポジションにいて、ずっと空きが出ないなんてこともあり得ます。

また、新しいポジションに行くには、自分がそのポジションにふさわしい経験、スキルを持っていることを示す必要があるわけですから、社員は毎日同じ仕事をしているだけでは、いつまでも同じポジションにロックインしてしまい、ずっと次のポジションに移ることができないという事象が発生します。

これを回避するためには、何らか別の施策で手を打つ必要があります。

そのメインとなる選択肢が、「教育機会の提供」だと考えます。

「ジョブ型雇用」と「教育の機会」は対(つい)で運用する

次のポジションに行くためのスキルを学ぶため、社員は定期的に、教育の場に身をおく必要があります。

昨今は人生100年時代と呼ばれ、学び直し、リカレント教育の重要性ま叫ばれていますが、ジョブ型雇用が主流になればなおさら重要になります。

「ジョブ型雇用」と「教育の機会」はセットで運用して、はじめてうまくいく仕組みです。

ジョブ型雇用が主流の欧米では、大企業やエンジニアなどの多い企業では社内教育の機会の提供に熱心ですし、個々の社員も仕事を速く片づけたらサッサと退社してセミナーや大学院の社会人コースを受けるなど、キャリアアップにつながるスキルの向上に余念がないという特徴があります。

一方、日本ではどうでしょうか。

会社の研修はカリキュラムが決まっている階層別研修だけだったり、自分の仕事が終わっても、なんとなく早く帰りづらいし、そうなると自主的な勉強の時間がない、といった状況では真のジョブ型雇用になったとは言えません。

教育機会の提供と言っても、それは会社で提供する画一的なお定まりの集合研修では効果が乏しいでしょう。

ジョブ型雇用は自分で手を上げて次のステップに行くわけですから、当然、教育の内容も自分のキャリアプランにあわせて選べなければ意味がありません。

社員が自由に受講するコースを選ぶことのできるカフェテリア方式であるとか、社外の研修やセミナーを受けられるよう、仕事が終わったらすぐ退社するような文化補助費の支給などの制度、あるいは外部研修やセミナーに業務として参加できる制度が必要です。

話題が先行しているジョブ型雇用ですが、運用した際の実効性も考慮しながら、トータルで制度を設計してはじめて身のある施策になると言えるでしょう。

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ひとことポイント

・ジョブ型雇用と教育機会の提供はセットで運用しよう

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