「独学の技法」はビジネスパーソンに必須のスキル

self studying 06.自己啓発

今回は山口周さんの著書、『独学の技法』を読んだので、そのまとめと感想、得られた示唆を前編・後編で記したいと思います。

本日は前編になります。

「独学の技法」とは

この本はタイトルのとおり、「独学」に関する本ですが、独学をかなりシステマチックにプロセス化しているのが特徴です。

独学というと「インプット」とイコールだと思いがちですが、インプットは独学のプロセスの1モジュールだと指摘しています。

著者はこの本の中で、独学が現代を生きるうえで必須のスキルであり、独学することで「知的戦闘力」を高めましょう、と提唱しています。

独学が必要な理由

著者は4つのキーワードで、独学が必須となった理由を説明しています。

独学が必須となった理由4つ
  • 知識の不良債権化:学んだ知識が富を生み出す期間がどんどん短くなってきているということ
  • 産業蒸発の時代:イノベーションを成し遂げられなかった企業や事業の蒸発が大量に発生すること
  • 人生三毛作:企業や事業の「旬の期間」が短縮化する一方で、私たちの生涯における労働期間は長期化し、今後のビジネスパーソンの多くは、仕事人生の中でドメインの変更を体験すること
  • クロスオーバー人材:二つの領域を横断・結合できる知識を持つ「領域を越境する人」が求められていること

これはやはりテクノロジーのエクスポネンシャル(指数関数的)な発展が関わっていると思います。

人々が長寿化したことも(これ自体がテクノロジーの力によるところがあると思いますが)要因でしょう。

人生100年時代と叫ばれて寿命は長くなる一方で、知識や産業の有効期限は短くなっていく。

そんな中で必要となるのが独学による骨太の「知的戦闘力」だというわけです。

独学を効果的に行う四つのモジュール

前述しましたが、独学には「インプット」以外にもプロセスがあります。

独学とは、「①戦略」「②インプット」「③抽象化・構造化」「④ストック」という四つのモジュールからなるシステムだ、としています。

独学の四つのモジュール
  • ①戦略:どのようなテーマについて知的戦闘力を高めようとしているのか、その方向性を考えること
  • ②インプット:戦略の方向性に基づいて、本やその他の情報ソースから情報をインプットすること
  • ③抽象化・構造化:インプットした知識を抽象化したり、他のものと結びつけたりすることで、自分なりのユニークな示唆・洞察・気づきを生み出すこと
  • ④ストック:獲得した知識と、抽象化・構造化によって得られた示唆や洞察をセットとして保存し、必要に応じて引き出せるように整理しておくこと

戦略もなく、やみくもにインプットしても効率が悪いので、自分はどういった「テーマ」で物事を見たいのかを考えます。

これは経済学や心理学といったジャンルと違い、ジャンルをクロスオーバーする「論点」のようなものなので、自分のオリジナリティを発揮できるものを選びます。

著者の例であれば「イノベーションの起こる組織はどのようなものか」であり、私であれば、「自由な時間を手に入れるためにはどう生きればよいか」といった感じでしょうか。

戦略を立てて、インプットを行った後は、得られた示唆を様々な場面で応用できるように抽象化・概念化します。

学んだものをそのまま覚えても、同じ状況にならないと使えませんので、これも重要な要素ですね。

ここはコルブの「経験学習」の考え方に近いと思いました。

そして、最後にストックを行いますが、ここで重要となるのは「覚えること」を目指さないことです。

著者の言葉で「脳の外部化」を行います。

今では「Evernote」のようなメモアプリのように、いろいろなクラウドサービスがありますので、こういったものを活用します。

よくよく考えてみたら、「ブログ」というのも、脳の外部化の一種ですね。

インプットでチェックする事項

著者は本の中で、読書の際にアンダーラインを引くことを勧めています。

その際、線を引く個所を決めるポイントが「事実⇒示唆⇒行動」の3点セットです。

これはかなり有益な考え方だと思います。

インプットでチェックする事項
  • 後で参照することになりそうな興味深い「事実
  • 興味深い事実から得られる「洞察」や「示唆
  • 洞察や示唆から得られる「行動」の指針

知的戦闘力を高める「リベラルアーツ」

著者はリベラルアーツ(≒教養)が知的戦闘力を高めるために重要と説きます。

たとえ今取り組んでいるビジネスに直接的には関係がない教養でも、間接的には関係があります。

いままでのセオリーや知識が役に立たないような局面においては、教養による「深い知性」の有無が、その人の知的戦闘力を大きく左右するためです。

教養の定義について著者は、「長期間にわたって、知的戦闘力に寄与する知識」であるとしています。

またリベラルアーツを学ぶことの神髄は、常識や現状を「問う」、「疑う」ためであるとも言っています。

そして大事なのは、教養の修得によって「しなやかな知性」を育むことであり、さらにそれによって本当の意味で「豊かな生」をまっとうすることであると説いています。

知的戦闘力を高める11ジャンルと学ぶ意義

ではリベラルアーツにはどんなものがあるでしょうか。

以下に、著者がオススメする11のジャンルと「なぜそれを身につけるべきなのか」という理由を示します。

著者がおススメする11のジャンル
  • 歴史:目の前で起きていることを、過去の事例から正確に理解すること、未来を予測する能力を高めること
  • 経済学:「経済」や「市場」が、ビジネスというゲームの基本ルールを規定していること理解すること、「価値」という概念の本質について洞察を得ること
  • 哲学:自分で考える力を鍛えること=哲学は「疑いの技術」であり、①この世界はどのようにして成り立っているのか?②その世界の中で、私たちはどのように生きていくべきなのか?という問いに向き合うこと
  • 経営学:ビジネスにおける基本的なコミュニケーションを行う上での必須リテラシーを身につけること
  • 心理学:あらゆるビジネスに関わる「人」がどのように感じ、考え、行動するかを知ること
  • 音楽:全体を直感的に掴む能力を高めること
  • 脳科学:「人間を知る」ことで、ある局面において、人間がどのような振る舞いをするかを正確に理解・予想すること
  • 文学:よりよく世界や人間性を理解すること
  • :レトリックの引き出しを増やして「言葉の力」を身につけること
  • 宗教:ある宗教に所属する組織や個人の「思考様式・行動様式」を理解すること
  • 自然科学:自然を科学的に分析したときの新たな発見や仮説がビジネスの問題解決の糸口をつかむこと

「読んで忘れておしまい」を避けたいと考えている私としては、著者の4つモジュールからなる独学システムの考え方はとても参考になりました。

著書のまとめだけでけっこう長くなってしまいました。

ということで、得られた示唆とビリーフについては、『後編』に書きたいと思います。

^U^

ひとことポイント

・独学の技法で人生を豊かにしよう

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