昨日の日経に、以下のような記事がありました。
投資情報会社FISCOによる同じ記事です(こちらは日経を購読していなくても見られます)。
内容としては新型コロナウィルスの影響で、「ジョブ・ディスクリプション」を基にした「ジョブ型」雇用が日本の大企業でも広がっている、というものです。
今回は、これからの時代、ジョブ・ディスクリプションがいかに重要かということについて、考察してみたいと思います。
自分のジョブ・ディスクリプションをどう書くかについても解説していますので、ご参考にしていただければと。
自分のジョブ・ディスクリプションが書けない日本人
ジョブ・ディスクリプションの定義
ジョブ・ディスクリプションとは、読んで字のごとくジョブ(=職務)をディスクリプション(=記述)した文書のことで、日本語では「職務記述書」とか「職務定義書」と呼ばれます。
新卒からずっと同じ会社で働いている方にはなじみのない言葉かと思いますが、転職する際の求人票みたいなものだと思っていただければ、ほぼあってると思います。
欧米ではスタンダードなもので、これを基に採用や配置、評価が行われるという極めて重要な文書です。
日本の人事制度が生んだ、ジョブ・ディスクリプション不要のゼネラリスト人材
日本の常識は世界の非常識で、こと人事制度にいたっては、かなり特殊です。
まず「新卒一斉採用」が世界でも珍しいです。
そして採用時、「総合職」とか「一般職」とか、どれだけ会社にコミットするかのような、かなり精神論的な区分でカテゴライズして採用します。
そして総合職は「社内ローテーション」により、2~3年に1回、今やっている仕事とは全然違う仕事へと配置換えをされながら出世していきます。
これで自社のことは色々知っているけれど、専門性がまるでないという、立派な○○社専用ゼネラリスト人材の完成です(笑)。
会社に「就社」する日本人、仕事に「就職」する世界の人々
日本で「就職」と言えば、それはほぼ「就社」と同義です。
日本人はよく、自己紹介するときに「○○社の○○です。」と会社名を名乗りますが、海外では社名を全面に押し出した自己紹介はしません。
「セールスを担当している~」とか「チーフ・エンジニアの~」とか、職務とか肩書きで自己紹介します。
最近では「データ・サイエンティスト」や「AI人材」など、一部の職種でジョブ型に近い雇用が始まりました。
ただ、まだまだ圧倒的に「就社」タイプの採用が多いのが日本の現状でしょう。
いざ転職で困る、積み上がらないキャリア
○○社専用ゼネラリストの弊害は何かというと、転職の際にまったく通用しないということです。
60歳定年、1社を立派に勤め上げてゴールの時代はそれでもよかったのですが、人生100年時代に、転職がゼロで終わるということは、まずありえなくなるでしょう。
どこかで必ず、転職を考える必要が出てきます。
その際、自分の得意や強み、専門性を活かせずに、ありきたりの市場飽和スキルのみで転職をすると、需給バランスでかなり賃金が下ることになります。
というか、AIやRPAのようなテクノロジーの力で、「ありきたりスキル市場」自体がなくなっている可能性もあります。
※RPA:事務処理を自動化するソフトウェア
「ジョブ型」雇用の時代はジョブ・ディスクリプションが必須
テレワークの普及が役割分担を明確にする
ジョブ・ディスクリプションを基にしたジョブ型雇用は、これからどんどん広がっていくと思います。
その流れを加速させたのが、昨今の新型コロナウィルスと、これを受けたテレワークの普及です。
テレワークは、これまで各々が「なんとなく」分担していた仕事のやり方を変えてしまいました。
それぞれが別の場所で働いているため、役割分担を明確にする必要があるためです。
自分のアイデンティティを他者に示す専門性が必須
役割分担には、自分の専門性が必須です。
「誰に任せれば、スケジュールを守って、品質の高い成果物が出るのか」ということを、上司は考えますので、これを自ら示す必要があります。
つまり、アイデンティティとしての専門性、強みを発信する必要があるわけです。
なんとなくオフィスをふらつく「潤滑油おじさん」はいずれ淘汰される
これまでなんとなくいろんなところに顔を出して、当たり障りのないことを言いながらも、なんとなく物事を丸く収める、そんなムードメーカーのようなおじさんは、これからの時代、廃れていきます。
そんな人は、自分の仕事をジョブ・ディスクリプションに書けないからです。
ただ、潤滑油おじさんにも生き残りの道はあります。
「潤滑油」を極めて、さらにデジタル時代に適合し、名ファシリテーターとして会議やプロジェクトを回しまくれば、きっとあちこちから引っ張りだこになるでしょう。
中小企業やベンチャー企業の場合はどうなるか
中小企業やベンチャー企業の場合、人手が常に足らず、現状では専門性などと言っていられない状況があります。
ただ、これからは、中小企業などでも、自社の専門的エリア以外の部分はクラウド・サービスにアウトソースする、「クラウド・ソーシング」を活用することが普通になっていくと思います。
大企業よりも職務範囲が広いとはいえど、やはり専門性をベースにした仕事の仕方が必要になるでしょう。
転職サービスの求人票を活用してジョブ・ディスクリプションを作成する
では、自分のジョブ・ディスクリプションをどうやって考えたらよいでしょうか。
その答えは転職サービスの求人票の活用にあります。
職務記述書の書き方と活用の仕方の手順は、以下の通りです。
では、各ステップを順番に見てみましょう。
転職サイトに登録して求人票を分析する
転職サイトへの登録はタダでできます。
これを活用しない手はありません。
まずは、いくつかの転職サイトへ登録して、自分と同じ職種で求人を見てみましょう。
それをいくつか拾ってきて、募集要項にある「仕事の内容」と「求めるスキル・経験」を分析します。
何件か見比べていると、必ず共通項があぶり出させると思いますので、どういう仕事にはどういう記述がされ、どういうスキルや経験が求められているのかをリンクさせます。
自分の職務内容を明確にする
あぶり出した共通項とリンクを基に、自分の職務記述書を書いてみましょう。
最初は箇条書きでどんどん書き出していき、あとから関連づけや流れを考えてストーリーをつけると、転職の際に便利になります。
社内でいくつかの部署を転々としている場合は、その仕事内容ごとに職務記述書を作ってみましょう。
理想の求人を見つけてギャップを明らかにする
たくさんの求人票を見ていると、自分の理想の求人がたまに見つかったりします。
その求人を、あなたの「暫定的な」次のステップととらえましょう。
その求人と今の現状の職務では、どういうギャップがあるでしょうか?
スキルや経験でのギャップがなく、かつ働く環境だけは向上するというギャップがある場合は、すぐにでも転職してしまっていいと思います。
求めるスキルや経験でのギャップがあるのであれば、それを具体的に抽出しましょう。
ギャップを埋めるための仕事の仕方を考える
抽出された必要なスキルや経験を基に、自分の仕事の中で、どういうことをやれば、そのギャップを埋めるようなスキルの習得や経験を得られるかを熟考します。
現業は必ずしも自分の思いどおりにはならないことだらけだと思いますが、方向性を自分の中で持っていないと、ズルズルと流されて月日が経ってしまいます。
目的意識を持って仕事をするだけで、かなり結果は変わってきます。
さらに可能であれば、こういうことをやりたいと自分から発信するようにしましょう。
注意:「私の専門ではないので、これはできません」はマイナス
さて、ここまで自分の専門性にこだわってジョブ・ディスクリプションを作る話をしましたが、一点、視野狭窄になるとそれはそれで危ないという注意点です。
たまに「これは私の専門ではないので、できません」と全力で仕事を拒否する人がいます。
本当にお門違いなのであればそれでもかまいませんが、自分の仕事をステップアップする上では、ある程度、幅を持った仕事をしていくことも重要です。
本当に自分の専門性と関係がないのか、どこか自分を活かせる部分がないかをよく検討してから答えを出すと、専門性がありながらも幅が広がり、結果としてプラスになると思います。
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ひとことポイント
・転職サービスの求人票を活用して、自分のジョブ・ディスクリプションを作ろう
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