本日は『「賢い子」に育てる究極のコツ』という育児・教育系の本を読んだので、この本について書き記しておきたいと思います。
この本は数年前に読んでいたのですが、改めて子供ができて少し大きくなってきたので、中身を再確認してまとめておきたいなと思った次第です。
『「賢い子」に育てる究極のコツ』の概要
「認知症」や「脳画像解析」のスペシャリストが書いた本
本書の概要については、著者自身の言葉を借りたほうが早いでしょう。
以下、引用文です。
私の所属する東北大学加齢医学研究所は、日本国内では唯一、大量のMRI画像をデータとして蓄積しています。
(略)
対象となるのは、5歳の子どもから80歳を超えるご高齢の方まで。
そのデータ数は、16万件にも上ります。
(略)
このようなビッグデータから、「どんな生活習慣の人が、どんな病気になりやすいか」「どんな人が認知症になりにくいか」などを明らかにするのが、私たちの仕事です。
(略)
本書でお伝えするのは、数例のデータや感覚からの結論ではなく、膨大な脳画像が教えてくれた、「賢い子」に育てるためのエッセンスです。
出典:「賢い子」に育てる究極のコツ
著者は認知症を専門とする医師・研究者であり、膨大な脳の解析画像を保有する東北大学加齢医学研究所に所属しています。
その著者が膨大なデータを基にあみ出した子育ての結論を凝縮したのが、本書ということになります。
以前のエントリーでも書きましたが、私は科学的根拠に基づく結論を書く本が好きなので、そういう意味ではとても私の嗜好になった良書です。
また子育ての本を書く著者が、主に高齢者が発症する認知症の専門医だというのは実に興味深いです。
子供を賢く育てる秘訣は「好奇心」
著者は、膨大な画像診断と聞き取り調査による研究結果から、子供を賢く育てる秘訣を「好奇心」だと結論づけています。
そして「好奇心」を伸ばすための具体的な方法を、3つの側面から紹介しています。
詳細は本編で紹介しますが、子供を賢く育てる秘訣は「好奇心」にあります。
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子供の好奇心を十分に伸ばし、脳をぐんぐん伸ばすコツを、本書では主に、
・3つの秘密道具を使った好奇心の伸ばし方
・子どもの脳の成長(年齢)に合わせた取り組み方
・健やかな脳を育む生活習慣
という3つの側面から紹介していきます。
出典:「賢い子」に育てる究極のコツ
3つ目の「健やかな脳を育む生活習慣」については、エビデンスは子供の脳の成長に合わせたもので説得力があるものの、対策の内容自体は成人の生活習慣と大差ない、万人に共通する健康の秘訣だと感じましたので、主にその他の2つに絞って解説します。
著書のポイント
著者が考える3つの秘密道具
著書は子供の好奇心を育てるための秘密道具として3つのアイテムを推奨しています。
図鑑は、好奇心を育てるための一番重要なアイテムです(後述)。
秘密道具その2はカメラ、時刻表、釣り竿、網、虫メガネ、望遠鏡、遮光版など、子供が何に興味を持っているかで変わります。
楽器は、ただ音感を鍛えるだけでなく、語学にも通じる力を養うことができるアイテムであると著者は述べています。
脳は、体の動きを司る領域、視野を司る領域、音を司る領域、言語を司る領域など、だいたいのエリアごとに働きが決まっています。
そのたくさんある領域の中で、実は、音を司る脳の領域と、言語を司る脳の領域は、非常に近いところにある、というより、ほぼ重なっているといえるのです。
出典:「賢い子」に育てる究極のコツ
確かに、私も言語の習得には「音」の聞き分けが重要だと考えており、持論として「モノマネが得意な人は、語学の発音も得意」という意見を持っていますので、著者の主張には共感できます。
著者が最も推しているのは図鑑
この本の中で、著者が一貫して最も重要と考えているのが「図鑑」です。
その理由は、著者が行った調査の結果、成績が伸びていった子は、幼いころから図鑑が大好きで、よく見ていたという事実が判明したからです。
ただし、ただ図鑑をただ買えばいいわけではありません。
図鑑を使って好奇心が育つように、子供が図鑑で得る「バーチャルの知識」と、現実世界の「リアルな体験」とを、親が結びつけてあげる必要があるのです。
図鑑で見たものを、動物園や植物園、はたまた近所の道路でも公園などで実物を確認する、そうすると脳の中で本物の知識が蓄えられ、それが刺激となってさらなる好奇心を育てるというわけです。
また、図鑑を買い与える時期も重要であると説いています。
私が本書で一番伝えたいことを簡単にいえば、この強い「好奇心」を、少しでも早く子供に身につけさせてほしい、ということです。
図観を与える時期でいうと、遅くとも3、4歳には用意してあげてほしいのです。
これは、男の子も女の子も共通です。
私がそう考える理由は、私たちの「脳のしくみ」にあります。
多くの子供は、3、4歳くらいになると、徐々に「好き・嫌い」を自分で判断するようになっていきます。
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反対に、その前から身近にあったものは、自然に「好き」という判断をします。
出典:「賢い子」に育てる究極のコツ
子供が好き嫌いを判別するようになる前に、自然と身の回りに図鑑がある環境を作ることが大切です。
ただ、お子さまが5歳以上の場合でも、図鑑好きになってもらう秘訣も、本編では解説されています。
年齢によって変わる「最も成長する力」
著者は、子供の年齢によって発達が著しい能力が異なるため、その能力に最適な時期に訓練を始めるべきだと説きます。
上記のリストは本書に忠実に作りましたが、0歳からの「図鑑・絵本・音楽」というのは、伸ばしたい力というより、そのための「ツール」ですね。
著者が上記の年齢を最適な時期と考えたのは、脳の発達と関係があります。
視覚や聴覚(0歳〜)→運動(3〜5歳)→語学(8〜10歳)→コミュニケーション(10歳〜思春期)と、子供の能力の発達の順にはあまり一貫性がないように見えます。
しかし、脳の成長という切り口で見ると、そこにはある法則が見出せます。
そう、この脳内の道路整備(脳の発達)は、「脳の後ろから前」に向かって起こるのです。
出典:「賢い子」に育てる究極のコツ
つまり脳は後ろから前に発達していき、それが個々の能力と紐づいているため、年齢によって一番育つ能力が変わるということです。
もちろん、子供には個体差があるとはいえ、親が焦ってあまりも早い段階から時期の合わない能力を鍛えようとしても大きな意味はないので、子供の成長に合わせた自然なタイミングで子供の成長をサポートしたいですね。
私の感想
私は本書を読んで、モチベーション理論の有効性を強く感じました。
モチベーション理論には「外的要因」と「内的要因」という考え方がありますが、好奇心はまさに内的要因の最たるものです。
一言で学校の成績が良いといっても、その要因は様々です。
親の顔色をうかがっている、成績が良いとお金がもらえる、他人に負けたくないなど、自分の好奇心から来るもの以外にも色々な理由が考えられます。
ただ、その理由が外から来る(他人やお金によるインセンティブ)である場合、つまり外的要因である場合は、それがなくなった瞬間、モチベーションも同時に下がってしまい、成績も落ちてしまうでしょう。
逆に好奇心は内的要因ですから、ただ知りたい、もっと理解したいと思う力で進んでいくので、外的要因に左右されません。
そういう意味では、学校の「成績が良い」の理由が「好奇心」から来ていたら、それは最高にゴキゲンな状態なんだろうなということです。
学校の成績は様々な科目の総合点で決まりますが、多少なりとも成績の凸凹(でこぼこ)はあっても、何かに対してとてつもない好奇心を持っている方が、社会に出た後に開花する可能性があると思います。
その点、総合点だけでは測れない子供の能力や興味関心を、親が常に関心を持って見守ることが大事だなと思いました。
今回取り上げた事項以外にも「脳の汎化」という作用で、何かひとつでも極めれば他の領域にもプラスの影響を与えるという話や、(コンピューター)ゲームをどう考えるか、学歴をどうとらえるかなど、親の悩みが深いところについての著者の回答があるので、おおいに参考になると思います。
ご興味あれば、子育てのご参考に読んでみてください。
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ひとことポイント
・「好奇心」こそ成長の最高の原動力
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