私のこれまでの職業経験から導き出されたキャリア論をお話する『私のキャリア論』の第3弾です。
私が考えるキャリアのポイントは全部で9つありました。
ということで、本日は「新しいことにチャレンジするならPDCAではなく、BML」というお話です。
既存のビジネスを回すために必須のPDCA
皆さんはPDCAという言葉をご存知かと思います。
①Plan(計画)、②Do(実行)、③Check(確認)、④Act(改善)の頭文字で、ビジネスのサイクルを回す基本的な考え方であると、新入社員研修などで教わることが多いですし、ビジネス書でもよく取り上げられています。
計画を練って、それに従って実行し、成果を確認して、改善点があれば次のサイクルに活かす。
確かに、このサイクルは既存のビジネスを進めるうえで、必ずやらなければならない事項を端的に表していますし、とても有用な考え方です。
ただ、このPDCAは万能ではありません。
それどころか、PDCAが逆に足かせになるような場合があります。
それは、計画が意味をなさないほどビジネス環境が不安定か、または全く先を見通せない場合です。
いわゆるVUCAと呼ばれる現代において、新しいビジネスをやろうと思ったときに、入念なリサーチと計画を立てても、まったく当てが外れてしまい、余計な時間を食っている間に、他社に先を越されてあっという間に市場を取られてしまった、なんてことも起こりうるのです。
そんな時代にはBMLの考え方が必要です。
VUCA時代にはBMLでアジャイルにやってみるのが一番いい
BMLとは何でしょうか。
BMLは①Build(構築)、②Measure(計測)、③Leaern(学習)の略で、著名なアントレプレナーであるエリック・リース氏が著した『リーンスタートアップ』に出てくる考え方です。
リース氏は、BMLのフィードバックループを回すことこそが、不確実性の高い状況下で最適なビジネス開発の方法だと説いています。
特にデジタルの世界では、これがほぼデフォルトの考え方と言っても過言ではないでしょう。
前述のとおり、不確実性の高い環境では、計画すること自体がそもそも難しく、成り立たないこともザラです。
そういう環境では、とにかく小さくやってみて(Build:構築)、どうなるか観察し(Measure:計測)、そこから学ぶ(Leaern:学習)ことで、このままの方向で継続するのか、それとも見込みがないので大胆にピボットするのかを決めることが、そしてそれを高速で回していくことが、最善の手となります。
なお、BMLはあくまで、新しいことに挑戦する際に有用な考え方であり、どんな場面でも有効というわけではありません。
既存のビジネスを回す場面など、これまでどおりPDCAでやった方がうまくいくことも多々あるでしょう。
要は自分が踏み込む局面にあったやり方でやる方がうまくいく、ということです。
ちなみに、これは趣味の話になりますが、レゴを使って何か新しいものを作る時、まず設計から入るレゴ・ビルダーと、とにかく作り始めて、作りながら考えるレゴ・ビルダーの2種類のビルダーがいます。
前者がPDCA方式で、後者がBML方式です。
私はどちらかというと後者で、手を動かしながら修正を繰り返して完成を目指すタイプです。
レゴの場合、自分で楽しめれば良いわけですから、「こっちが正しい」というのはありません。
相反する考え方ではない、PDCAとBML
私はPDCAとBMLが相反する考え方とは思っていません。
それどころか、PDCAとBMLは組み合わせて使えば、相乗効果を発揮すると思っています。
私たちが何かを始めるときに、衝動的に何かを始めることがあると思います。
人でもモノでもサービスでも、一目惚れをしたらだいたい、衝動的なスタートになりますよね。
それと同時に、よく考えてから行動に移す場面もあるでしょう。
失敗できないときや大きな決断をするときです。
ときには、計画から入ったのか行動から入ったのか定かではないときもあると思います。
小さく計画して始めた、小さく動いてから計画した、など、最初のステップが小さい時です。
私が思うに、PDCAもBMLも階層化できる概念で、例えば大きな概念としてのPDCAがあり、このPDCAの各フェーズ、PlanフェーズやDoフェーズの中にBMLがそれぞれ入ったり、逆に大きなBMLという概念があって、BフェーズやMフェーズの中にPDCAがそれぞれ入ってもよいと思います。
もちろん、大きなPDCAの中に小さなPDCA、大きなBMLの中に小さなBMLがあってもよいわけで、それは場面ごとに使い分ければいいわけです。
要は、そのときそのときの環境に合わせて、PDCAとBMLを大小もあわせて使い分けていければいいのです。
学習の観点から捉えたコルブの経験学習モデル
BMLやPDCAのようなモデルと似たようなものとして、組織行動学や学習理論の世界では、コルブの経験学習モデルというものがあります。
詳しくは過去のエントリーに記していますが、このモデルは「試行」、「経験」、「省察」、「概念化」の4つのステップからできています。
実はコルブの経験学習モデルはBMLに近い考え方で、それを学習という観点から捉え直したようなものになっています。
つまり試行がBuildにあたり、経験と省察がMeseare、そして概念化はLearnに概ねあたるのではないかと思います。
成立の順番的には、BMLが経験学習モデルに近いと言えますが。
自分のキャリアを捉えるときに、BMLのフィードバックループがわかりやすいのか経験学習モデルがわかりやすいのかは人それぞれだと思いますが、どちらにしても、キャリアに応用して考えた場合、「周りの環境に働きかけてその影響を計測し、結果を踏まえて自分を作り替える」というループだということを覚えておくとよいでしょう。
とにかく動いて自分のミッションをあぶり出す
キャリアの世界でも、私のキャリア論①で述べたように、「キャリアはプランニングできない」わけですから、とにかく動いてみることが大事です。
動くことで、自分のやりたいことや進むべき道、やりたくないこと、得意や不得意、どういうことに心が動くかなどが掴めてきます。
と同時に、たくさん動くことでチャンスも転がってきますので、より多くの選択肢を見つけることができます。
BMLのフィードバックループを高速で回すことこそ、自分のキャリアを構築する最上の方法だと思います。
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ひとことポイント
・BMLのフィードバックループを高速で回して、キャリアを少しずつ形作っていこう
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