先日、日本でFIREを達成された有名ブロガーの三菱サラリーマンこと、穂高唯希さんの『本気でFIREをめざす人のための資産形成入門』を読んだので、今回は、穂高さんのFIRE本について書き記しておきたいと思います。
「FIREって何?」という方は以下のエントリーもご参考に。
本の概要
それでは本の概要について、ポイントを絞って見てみましょう。
投資の基本ポリシーは高配当株・連続増配当株
この本では、基本的にはアメリカを中心とした高配当、連続増配当株の購入による資産形成を推奨しています。
著者が考える配当金のメリット・魅力は以下の9つです。
著者が高配当株、連続増配当株を推す理由は、以下の文章にあらわれています。
そして何よりやりがいがあるのは、株式を買えば買っただけ配当金が増えていくこと。
そして、給与と配当金を再び投資に回すことで配当金が右肩上がりに増えていくということです。
人間が何かに取り組む際には、「右肩上がりに積み上げていけるものを数値でもって可視化すること」が極めて有効です。
その意味でも、毎月給与から株式を買い続けて配当金を積み上げていくスタイルは、資産形成に非常に適しています。
出典:本気でFIREをめざす人のための資産形成入門
本の冒頭に、著者は一刻も早く会社を辞めて自由になりたいと考えていたと記されています。
そのため、自分の心理状態に注目し、「精神的牢獄」であるサラリーマン生活の中に希望とやりがいを感じるため、毎月右肩上がりの成長をする配当という点にこだわっていたということです。
著者の投資銘柄・ポートフォリオと投資理由がわかる
著者はご自身が投資している投資先とその理由を詳述しています。
たとえばジョンソン・エンド・ジョンソンに投資している理由はなぜか、AT&Tはどこが優れているのかなど、銘柄ごとの解説があります。
これを読めばどういう理由、投資方針で投資をしているのかがわかるので、投資の勉強にもなりますし、あまり深く考えたくないという人でも同じ投資先に投資をすることもできます。
個別銘柄と同じく、高配当ETFについても著者が厳選した銘柄3選が載っていますので、これを見たら即日、同じようなポートフォリオを組成することもできます。
ただ、投資は自己責任ですので、やはり自分で理解して投資した方がいいことは言うまでもないですが。
日本人ならではの解説がある
FIREの本はすでにけっこう出版されていますが、著者が外国人、というかアメリカ人であるケースが多いです。
基本的には株式投資であればアメリカでもどこでも日本から投資できますし、投資哲学はある程度の普遍性があるので、アメリカ人の本でも全然問題ありませんが、やはり日本に住んでいる人が日本の制度を活用しながら投資をするためには、日本人の本が一番しっくりきます。
たとえば、NISAやイデコの解説があったりとか、日本独特の制度である株主優待の話、日本のネット証券3社(SBI証券、楽天証券、マネックス証券)の解説から、はては図書館の新刊予約による節約術など、日本人ならではの解説が豊富です。
「節約」に関する事例も豊富
この本には、投資と同じくらい重要な「節約」に関する事例も豊富で、著者の経験を基にした支出最適化(=節約)15選という形で、節約術が詳述されています。
FIREの他の本に似た側面もありますが、保険の必要性の是非なども少し書かれているあたりは、お金にまつわる解説を全般的にする両学長の本に近い内容だと感じました。
収入アップについての言及はない
この本には、FIREの基本3原則である①収入の増加、②支出の減少、③投資の継続のうち、①の収入アップに関する言及はほぼありません。
つまり、この本では収入については前提条件としてとらえています。
ただ、収入が低いと嘆く読者を想定したフォローがしっかりなされている印象です。
「27歳(女性)・独身・年収350万円」の方から「57歳(男性)・妻は専業主婦・年収700万円」の方まで、収入や年齢の様々な5つのパターンの相談者への回答という形で、事例別にどういう投資をしたら良いかについても回答しています。
支出が一定であれば、収入が多ければ多いほど投資に回せるお金は増えるのは事実ですが、そこは著者としては問題と考えてはおらず、単に投資の期間が延びるだけというのが基本スタンスだと思います。
特徴は著者の人生哲学
この本の最大の特徴は、著者の人生哲学が随所に記載されていることです。
個人的には、著者の人生観に触れる部分が一番、共感できましたし、面白いと感じました。
今回は私が共感した著者による言葉を3つ、ご紹介します。
生き方の重要性
1つ目は、経済的自由において、生き方が重要だと説く文章です。
なぜなら、モノがあふれ、社会が高度化した先進国において人々の幸福に直結する要素は、金銭を投じて得たモノというよりも、生き方そのものにあることに、人々が薄々気づき始めているからです。
(中略)
経済的自由と聞くと、資産や支出などの経済状況にフォーカスしがちですが、その経済状況を決定づけるのは、生き方です。
つまり、「自分がどう生きたいのか」が、FIREや経済的自由を語る上で決定的に重要です。
出典:本気でFIREをめざす人のための資産形成入門
経済的自由には、自分の「生き方」そのものが大きなファクターであるというのは、著者が社会人になってからひたすら収入の8割を投資に回してきた実践者としての人生哲学なのでしょう。
人生の原動力
2つ目は、人生の原動力についての記述です。
私は、人生の原動力は「挑戦し続けること」だと思っています。
(中略)
「仕事を辞めたら人間ダメになる」のではなく、目標や夢・生きがいもなく、現状維持に甘んじるような生活は、日常に張り合いがなくなる」のだと私は考えます。
出典:本気でFIREをめざす人のための資産形成入門
著者は30歳にしてすでに資産が7,000万円を超え、配当収入が支出を上回ったため、セミリタイアをしていますが、挑戦し続けることが人生だと考えているため、これからも挑戦を続けるということです。
そしてその挑戦の一つが、こうした著作などを通じて、高配当株による資産形成の考え方を広めることだということです。
この辺は、「manablog」のまなぶさんや「リベ大」の両学長に近い考え方です。
言霊の力と「支出の最適化」
3つ目は、言霊の力を説いた部分です。
私は言霊というものは確実に存在すると思っていて、ネガティブな意味合いを帯びた言葉を使っていると、気持ちや人生にまでマイナスな作用をもたらすと考えています。
私の中で「節約」や「倹約」って、何も「雑巾を絞って絞ってカラカラになるまで我慢して支出をカスまで搾る」というイメージではなく、「自分の価値観や夢・目標に合わせて、金銭に関わる経済行動を適切に取捨選択する」ことを指します。
そもそも節約というのは、決して「自分の将来可能性を狭める行動」ではありません。むしろ自分の将来可能性までのロードマップを適切に踏んでいく上で必要な作業です。
出典:本気でFIREをめざす人のための資産形成入門
著者は言霊の力を信じているため、「節約」や「倹約」という言葉を使わず、「支出の最適化」というポジティブワードを使っています。
人間の心理に着目するところが、著者らしい考え方だと感じます。
最も大きな差別化要因は、著者のブログ
私が考えるこの本の差別化要因は、ちょっと逆説的というか厳密には本の内容ではないですが、著者がブログでこれまでの投資状況を公開していることです。
この本は一つの書籍としてまとまっているので、整理がされていて読みやすいというメリットがあります。
と同時に、ブログは即時性があり、また時系列での閲覧ができるというメリットがあるので、リアルタイムでいつ、どういった心境で、どういう投資をしたのかを追うことができます。
つまり、本とブログを合わせることで、著者の投資スタイルを把握したうえで、著者の投資を追体験できるのです。
これにより、読者も疑似体験としての経験値を得ることができ、投資に対する考え方を磨くことができるでしょう。
著書とブログの合わせ技をオススメします。
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ひとことポイント
・三菱サラリーマンさんの著書を読んでからブログを追って投資の追体験をしよう
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