最近、出向起業とか社内副業とか、今まであまり聞いたことのない雇用形態のバズワードを聞くようになりました。
こうした「新しい雇用のカタチ」は、ざっと挙げただけでも5つくらいありました。
日本の企業も目まぐるしく変わる環境に対応した働き方を模索しており、なかなかおもしろいことになってきているなと感じます。
ということで今回は、日本の企業も導入し始めた「新しい雇用のカタチ」について書き記したいと思います。
新しい雇用のカタチ
副業人材募集
1つ目は、ライオン、ヤフージャパン、ユニリーバなどが実施する「副業人材の外部からの募集」です。
過去のエントリーでもライオンとヤフージャパンのケースを取り上げました。
過去のエントリーにも書きましたが、企業側と副業人材側の双方、Win-Winの施策なので、普及すると思います。
後は、副業人材側の本業の会社が副業に対して制度を柔軟に変えられるかで、普及のスピードが変わってくるでしょう。
社内副業
お次はKDDIが始めた「社内副業」。
KDDIの制度は、期間が最長6カ月、就業時間の最大2割を副業にあてることができ、他の部署で働いた成果も人事評価に反映されるもので、副業人材を受け入れたい部署が募集をして、社員が自ら応募するというもの。
社内副業と呼ぶかは別として、「労働時間の何割かを他の仕事にあてる」という制度自体は、昔からどこの企業でもやっていることだと思います。
ただ、副業が注目されていきている今、「社内副業」というネーミングに話題性がありますし、仕事のやり方の定義としても、「副業」をあてはめることに面白さがあります。
副業は、従来からあるような、新設部署とか繁忙の部署の業務を一時的に手伝うような「兼業」とは異なります。
また、公募ではあるものの、本業ごと籍を移す「社内公募制度」とも一線を画します。
まさしく社内で本業以外の仕事をする制度です。
大企業でどういう部署に行くは運の要素が非常に強いので、ある意味、理不尽なところがありますが、この制度を導入すれば、やる気のある人材が手を挙げて副業に取り組むでしょうし、成果を挙げれば実際に異動させてあげればいいわけで、キチンと運用できれば優れた成果を生む気がします。
カギは「本業とのバランスの調整」や、副業にのめり込んで「本業でうつにならないよう対策する」ことでしょうか。
出向起業
NECなどが採用する「出向起業」。
この制度は、社員がもともとの企業に籍を残しながら、かつ出向元から給与をもらいつつ起業をして、期限を区切って出向先のスタートアップに移るというものです。
セーフティネットのある起業は賛否両論だと思いますが、リスクを取りたがらないお国柄が色濃く出ていて、「ザ・日本の制度」という感じがしますが、まぁ何もしないよりは全然いいでしょう。
挑戦したい人を後押しするわけですから。
出向起業は、元々の会社に優れた技術が存在していて、それを本業では活かしきれない場合に別事業としてスピンアウトする、という流れが自然だと思いますので、技術系の大企業から起こしやすいものでしょう。
ソニーからスピンアウトしたスマートロック(施錠)の「Qrio」も同じような経緯だった気がします。
まぁリクルートのようなサービス業だけどスピンアウトしまくるところもありますが、あれはもう、起業することが当たり前くらい、企業(リクルート)のDNAにまで昇華しているケースですね。
出向起業制度は、起業するわけですから当然、事業の当たりはずれがあると思いますが、当たった場合、どうするのでしょうね。
「期限を区切って帰る」と言っても、事業が当たって拡大したら戻れなくなりそうです。
というか、戻ってきたくなくなりそうです。
出向起業については、経済産業省が「大企業人材等新規事業創造支援事業費補助金」という漢字20文字の補助金を作っています。
しかし、お役所は漢字だけで言葉を作る天才です。
レンタル移籍
出向起業と少し似たところのある制度ですが、「レンタル移籍」は大企業の社員がスタートアップに一時的に移籍する制度です。
私もよく知っているスタートアップに「ローン・ディール」という企業が、大企業とスタートアップの「レンタル移籍」を通じた人材交流を手がけています。
こちらの場合、自分で起業するわけではなく、誰かが起業した会社に、短期間、修行に行くわけです。
最近ですと、あいおいニッセイ同和損保や旭化成のレンタル移籍がプレスリリースされていました。
スタートアップとしても、とにかく人手はいくらあっても足りませんし、制度や仕組みを作ることができる人材であれば歓迎です。
大企業側も、優秀な人材を流出することなく、スタートアップという刺激的な環境の中で社員が成長することを期待できるわけです。
ジョブ型雇用
日立や富士通が着々と進めていることで話題なのが「ジョブ型雇用」です。
欧米ではスタンダードとなっている、職務内容を明確にした雇用制度です。
日本で従来から続く「メンバーシップ型」の雇用は、配置転換で社内の様々な部署を経験して成長していくキャリアモデルですが、ジョブ型は「職務記述書」を基にしたスキルがマッチした人材を配置するもので、専門性を重視したキャリアモデルが特徴です。
終身雇用が前提の時代はメンバーシップ型でも問題ありませんでしたが、今やトヨタや経団連も終身雇用は維持できないと明確に宣言している時代ですから、これからジョブ型雇用に転換する企業は増えるでしょう。
新型コロナウィルスの影響によるリモートワークの普及により、職務内容がはっきりしているジョブ型雇用のメリットを感じ、導入に踏み切る企業が増えた印象です。
その中でもジョブ型雇用と相性がいいのがIT系・デジタル系の企業です。
元々エンジニアは職務内容を明確にしやすい仕事ですし、転職者も多く流動性も高いので、この業界には割とすんなり定着するでしょう。
その他の業界まで「すそ野」を広げられるかが普及のポイントでしょうね。
VUCA時代のサステナビリティを考えるなら、「働き方の多様性」を高めることは自然な選択
さて様々な新しい雇用の類型をご紹介してきましたが、こうして見るとやはりというか、デジタルに強い会社が多いですね。
VUCAと呼ばれる激動の時代には、いかに時代にあわせて素早く変わっていけるかが事業の存亡を決めるわけですが、デジタル化と働き方の多様性は相性がバツグンにいいので、デジタル産業・企業が強くなっていくのは必然の流れでしょう。
先行する企業が産業界全体の呼び水になり、日本の働き方が大きく変わることを期待したいと思います。
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ひとことポイント
・「働き方の多様性を高める活動は何か」を考えて次の行動に移そう
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