さて、前回のエントリーでは、『独学の技法』のあらすじをまとめました。
今回は本の中から、私が「なるほど!」と思った部分と、そこから得られた示唆について書きたいと思います。
仮説と問い
仮説を見つけよ
”抽象化された定理は別に真実である必要はなく、仮説でかまわない。”
出典:独学の技法
この「抽象化された定理」というのは、「知識」から「知恵」を導き出したときの「洞察」や「示唆」という意味で使われていますが、つまりは本人の「これはこういうことではないのか」という、モノのとらえ方であり、 価値観や信念/ビリーフと同義だと思いました。
そしてそれは、「仮説」でもよいのだと。
つまり自分の価値観や信念/ビリーフもはじめから完璧なものであることは稀なので、少しずつ修正していく必要があります。
だから仮説なのだと。
そして仮説は「問い」でもあるので、その「問い」を持って日々行動することで、さらに信念/ビリーフの検証ができ、研鑽もできるというわけです。
問いを求めよ
”「問い」のないところに「学び」はない。
極論すれば、私たちは新しい「問い」を作るためにこそ独学しているわけで、独学の目的は新しい「知」を得るよりも、新しい「問い」を得るためだといってもいいほどだ。”
出典:独学の技法
独学は突き詰めれば、新たな「問い」を探すことだというこの一節、これはコーチングにもつながる言葉だと思います。
良い「問い」が頭にあることで、人は自分で考え、新しいことを実践し、解を見つけて進んでいくということですね。
「問い」の重要性を伝えるすばらしい一節です。
ジャンルとセルフ・プロデュース
テーマを設定し、ジャンルを交差させる
”ジャンルに沿って勉強をするということは、すでに誰かが体系化した知識の枠組みに沿って勉強するということだから、その人ならではの洞察や示唆が生まれにくい。”
出典:独学の技法
これは「ああ、なるほどなぁ。」と思いました。
だから自分なりの「テーマ」を設定して、「ジャンル」についてはクロスオーバーさせることが重要なのだと。
これについてはドイツの哲学者、アルトゥル・シャーペンウェルの言葉の引用もあります。
いわく「読書は、他人にものを考えてもらうことである。
本を読む我々は、他人の考えた過程を反復的にたどるにすぎない」と。
先人の知恵をまずは吸収するという意味では読者は重要ですが、やはり自分なりの「問い」を持って「本と対話する」ことが重要ですね。
ジャンル選びをセルフ・プロデュースにつなげる
”まずは「自分をプロデュースするつもりで、ジャンルを選ぶ」。
自分をプロデュースするということはつまり、他の人にはない組み合わせを選ぶ、ということ。”
”クロスオーバー、つまり「掛け算を作る」というのが自己プロデュースのポイント。”
出典:独学の技法
この視点は大事だと思います。
キャリアを検討するうえで、他人と比較されない強み。
自分にしかない強み。
そういうものを持った人は、やはり引く手あまたでしょう。
ここでもクロスオーバー(掛け算)がキーワードとして出てきます。
これからの時代に必須の視点ですね。
「嫌いなもの」でわかる自分
”キャリアカウンセリングでは、「好きなもの」より「嫌いなもの」を聞いた方が、その人のパーソナリティがよくわかる場合が多い。
いままでで一番強い怒りを感じたことを聞けば、その人が何を大切にしているのかがわかる。”(一部要約)
出典:独学の技法
これまた「なるほど!」と、私が読んでいて膝を打ったところです。
「自分は何がしたいか」を考えても漠然として思い浮かばないときは、「自分は何をしたくないか」も一緒に考えれば、反対解釈で自分の道が見えるかもしれません。
「嫌いなもの」を聞くことは、自分以外の人のことを深く知るときにも有効な方法ですね。
これからは誰かのことを深く知りたいときは、「嫌いなもの」も聞いてみたいと思います。
嫌いなものといっても、食べ物では意味がないと思いますが(笑)。
読書と独学
読書は読者のコンテクストと共にある
”人が、ある本を面白いと思えるか思えないかは、その人の能力や置かれた状況、つまり文脈によって決まる。”
”かつて面白いと思えなかった本でも、文脈が変わればまた評価も変わってくる可能性がある。”
出典:独学の技法
これは私の持っている信念/ビリーフと一致した部分です。
読書にはそのときそのときのコンテクストがある、ということですね。
だから同じ本を読み返しても、以前とは違った発見があるわけです。
情報は「生け捕り」が大事
”イケスに「情報」という魚を生きたまま泳がせる。”
出典:独学の技法
この一文は比喩表現ですね。
外部にある膨大な情報は「海」、切り取った紋切り型の頭にある知識は「冷蔵庫」で、そのどちらでもない「生きたままの知識」のようなものでしょうか。
ただ、「イケス」が何を表しているのか、具体的な例示がなかったので、そこを知りたいと思いました。
視野を広げて常識を疑う
”知的ストックで常識を相対化する。”
出典:独学の技法
「常識」というのは世界的に見れば、また歴史的に見れば、きわめて非常識であることが往々にしてあるということです。
日本では常識だった「終身雇用」や「年功序列」は世界から見れば非常識というように。
重要なのは、よく言われるような「常識を疑う」という態度を身につけることではない。
「見送っていい常識」と「疑うべき常識」を見極める選球眼を持つべきだと、著者は唱えています。
そしてこの選球眼を与えてくれるのがまさに「厚いストック」だと。
リベラルアーツの厚みがものをいうということですね。
著者と対話せよ
”本というのは買ってきた時点では未完成な作品であり、読書と著者との対話を通じて、さまざまな書き込みがされることで作品として完成する。”
出典:独学の技法
私も「良い読書」をしているときは、対話が発展しすぎて、なかなか読書が進みません(笑)。
そうなんです、頭に「問い」を持っていて、そこに響くような本を読んでいると、対話がものすごく発生するんですよね。
能動的な読書というものは、やはり著者と対話をして自分なりの示唆に昇華することだと、あらためて思いました。
著者は「転記を「9箇所」に制限して選り抜け」ともアドバイスしていたので、9つのポイントで挙げてみました。
「独学の技法」は、大量の読書をする前にまず読んでおきたい一冊だと思います。
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ひとことポイント
・独学、するべし
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