少し前ですが、日経にこんな記事がありました。
昨日のエントリーで孫さんのVision Fundのお話をしたので、今日は日系CVCが相変わらず日和見だと思ったこの記事を取り上げたいと思います。
日系CVCの投資減少方針に対する4者4様のコメント
日経の記事は、デロイトトーマツがコーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)81社に行った調査をまとめたもので、これによると大企業の9割が、スタートアップ投資を今年度は減らす意向とのこと。
いかにも日本の大企業らしい方針。
この記事には①日本の大企業のCVC担当者、②ベンチャー・キャピタルのGP(投資家)、③スタンフォード大の先生、④新たにCVCを始める企業、の4者4様のコメントがあって面白かったです。
日本の大企業のCVC担当者
CVCを持つ大企業など事業会社216社に聞いたところ、半数以上が「新型コロナの本業への影響が大きい」と回答。
あるCVCの責任者は「新たな投資に慎重にならざるを得ない」と話す。
出典:日経電子版 2020年4月27日「大企業スタートアップ投資「減らす」9割、協業後退も」
このコメントをしたCVCの責任者がCVC全体を代弁しているかは不明ですが、少なくとも、9割のCVCが今年度の投資を減らすことは事実です。
おそらくは、投資先の収益性や将来性をより厳しく見ていくのでしょう。
つまり、より「すぐに結果が出そうか?」に重きをおくと思います。
それが元々の投資方針だったのか?というかそもそもなぜベンチャー・キャピタルをやろうと考えたのか?それがベンチャー・キャピタルの本質なのか?ということはよく考えた方が良い感じます。
景気の波により判断基準が変えることは果たして正しいのでしょうか。
②ベンチャー・キャピタルのGP
一方で「大企業の投資が減ることで、企業価値が適正価格に向かい、投資しやすくなる」(DNXベンチャーズの倉林陽マネージングディレクター)との見方もある。
出典:日経電子版 2020年4月27日「大企業スタートアップ投資「減らす」9割、協業後退も」
私も一度だけですが、倉林さんにお会いしたことがあるので、何となく想像できますが、これは本音でしょう。
ある意味、投資先の適正価格での確保という意味で、ライバルであるCVCに狩場を荒らされていたベンチャー・キャピタルは、みな一様にガッツポーズではないかなと。
私がお付き合いのある他のベンチャー・キャピタルの方も、ちょっと前に「最近はCVCが増えてスタートアップのバリュエーション(企業価値)が上がってしまっていて投資がしづらい。」とおっしゃっていましたので。
独立したベンチャー・キャピタルの方がブレずに投資できるので、不景気に強いということかもしれません。
スタンフォード大の先生
米スタンフォード大学の櫛田健児リサーチスカラーは「新事業を生み出す企業と、既存事業とともに縮小する企業の差が開く。
今こそオープンイノベーションに本腰を入れるべきだ」と指摘している。
出典:日経電子版 2020年4月27日「大企業スタートアップ投資「減らす」9割、協業後退も」
櫛田先生はスタンフォードを拠点として、日本の大企業とシリコンバレーのスタートアップをつなぐイベントを開催したりしている方なので、この調査結果には「またか…」とため息をついていると思います。
櫛田先生はさんざん「シリコンバレーの日本企業が陥る、10のワーストプラクティス」と題して日系企業の「ダメなところあるある」をセミナーで解説しています。
そのうちの一つに、日本企業は「バブルまっただ中にやってきて、バブル崩壊後に撤退」というものがあり、今回のアンケート結果は、どことなくこれを彷彿とさせるものがあるなと感じます。
怒気を込めた櫛田節がまたどこかのセミナーで炸裂するなーと思いました。
新たにCVCを始める企業
ヤマトHDは「オープンイノベーションを通じて自社のデジタル化を加速する」と説明する。
出典:日経電子版 2020年4月27日「大企業スタートアップ投資「減らす」9割、協業後退も」
日経の記事によれば、逆風を好機とし、ヤマトホールディングス(HD)とセイコーエプソンはそれぞれ50億円規模の投資ファンドを立ち上げたとのこと。
おめでとうございます。
あなたたちこそCVCの勝ち組です。
適正な価格でバンバン投資しちゃってください。
2020年はCVCにとってはまたとないビンテージ(ファンドの設立年度)になるのでは?
風のように現れ風のように去っていく日本企業
シリコンバレーはベンチャー・キャピタル投資のメッカですので、日系企業もよく投資先を探しにやってきます。
ただ、これまでの歴史的な経緯から、日本の企業は好景気で風のように現れて、不景気でもまた風のように去っていく、と言われています。
もちろん、これはネガティブな意味です。
観光客なんて揶揄されることもあります。
櫛田先生も指摘しているとおり、好景気の時しか来ないんです。
これがいかに自分都合の考えか、人で考えたらわかりますね。
調子が良いと近づいてきて、調子が悪くなるといなくなる人なんて、誰も信用できません。
「私たちは儲かっているときに片手間でやってます」と自ら言っているようなものです。
そもそも本業の影響を受けないために、直接投資でなく、わざわざCVCにしているはずなのに、なぜこういう回答になるのか?
やはり、本業とは切っても切り離せないのが「コーポレート」ベンチャー・キャピタルの宿命でしょうか。
「逆張り」こそ投資の花
投資で一番儲かるのは逆張りが当たったときです。
皆が買わない時だからこそ、買う。
誰も買わないから、適正か、それ以下の価格で買える。
だから儲かる。
景気が冷え込んだからと投資を控えていたら、その他大勢から抜け出せません。
これは個人投資家にも言えますが、日和見投資家は食い物にされて終わりです。
企業でも個人でも本質は一緒です。
ブレない軸を持って、ピンチのときこそ、逆張りできる人になりましょう。
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ひとことポイント
・ここぞというときは逆張りをできる人間になろう
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