本日は樺沢紫苑さんの著書『精神科医が見つけた3つの幸福』について書き記しておきたいと思います。
幸せとは何かを再考する際に、大いに参考になる素晴らしい著書です!
『精神科医が見つけた3つの幸福』の概要
「幸せ」の再定義とTo Doを示した本
この本を簡単に要約すると、漠然とした概念である「幸せ」を精神科医の視点から再定義して、幸福であるためにはどうすればよいかの「To Do」を示した本です。
著者の言葉を借りましょう。
幸せとは何か?
精神科医として、脳科学者として、幸せとは真逆な状態であるメンタル患者さんの「苦しみ」を通して、試行錯誤してきましたが、本書では私の30年間の「幸せに生きる」ための答えを集大成としてまとめました。
(中略)
だからこそ本書で示す「幸福」は、今まで出版された数多くの「幸福本」の中で、最も「現実的」「具体的」であり、実践的で明確な「To Do(すべきこと)」を示しました。
出典:精神科医が見つけた3つの幸福
何といっても後述する幸福の定義を「幸せの三段重」理論にわかりやすくまとめたのが秀逸なポイントです。
著者は精神科医でベストセラー多数のビジネス書作家
この本の著者の樺沢紫苑さんは精神科医です。
樺沢さんが長年の診療の中で、多くのうつ病患者さんたちを診てきた経験の集大成ともいえるのが、この本です。
樺沢さんは、うつ病になる多くの人はまじめで、仕事も熱心、幸せになるためにがんばっていると言います。
多くの人は、「仕事を一生懸命頑張れば、幸せになれる!」と思っていますが、私は「私は仕事を一生懸命頑張りすぎれば、メンタル疾患になる!」と確信しています。
では、「仕事を頑張らなくていいのか」「手を抜いていいのか」というと、そうではありません。
仕事以上に「大切なもの」をないがしろにして、必死に働くから不幸せになるのです。
出典:精神科医が見つけた3つの幸福
ただ、がんばり方が間違っている、仕事以上に「大切なもの」をないがしろにしてはいけない、幸せには順番があると。
その順番を図解で解説したのが、幸せの三段重理論です。
著者はまた、多くのベストセラー・ビジネス書を世に出しています。
精神科医、そして脳科学者としての知見を活用したブレインハック系の著書が多く、特に『インプット大全、『アウトプット大全』、『ブレインメンタル強化大全』、『ストレスフリー超大全』、『行動最適化大全』など、大全シリーズで有名です。
私が初めて樺沢さんの本に触れたのは『インプット大全』だったと思います。
あと個人的には著者の『脳のパフォーマンスを最大まで引き出す神・時間術』も好きです。
著者の幸福に対する考えを集約した「幸せの三段重」理論
幸福の順番を示す「幸せの三段重」理論
幸せには順番があるーそれを図示したのが、「幸せの三段重」理論です。
この図をご覧いただければお分かりのとおり、著者の定義では、幸福は3つあります。
このとき著者が着目したのが、幸福感を感じるときに、どのような脳内物質が分泌されているかです。
いかにも脳科学者らしい着眼点ですね。
脳内物質の本を片っ端から読んでいくと、私たちの日常的な幸福感を構成する主たる幸福物質として、「ドーパミン」「セロトニン」「オキシトシン」の3つが特に注目されています。
(中略)
ドーパミン、セロトニン、オキシトシンが十分に分泌されている状態で、私たちは「幸福」を感じる。
つまり、脳内で幸福物質が出た状態が幸せであり、幸福物質を出す条件というのが「幸せになる方法」であると言えます。
出典:精神科医が見つけた3つの幸福
「ドーパミン」、「セロトニン」、「オキシトシン」の3つの中で、最も基礎となる幸福から順番に並べると、①セロトニン、②オキシトシン、③ドーパミンの順となります。
これが私たちが積み上げる(メンテナンスする)べき幸せの順番です。
セロトニン的幸福→オキシトシン的幸福→ドーパミン的幸福の順番。
これが正解です。
ドーパミン的幸福は一番最後です。
この順番を間違えると、幸福になるどころか、むしろおもいっきり不幸になる可能性もありますし、私はそうなった人を山ほど見ています。
出典:精神科医が見つけた3つの幸福
ではそれぞれの幸福は、どういう幸福感を意味するのでしょうか。
順番に見ていきましょう。
セロトニン的幸福
1つ目が心と体の健康に関する幸福である、セロトニン的幸福。
セロトニン的幸福とは、具体的にはどのような幸福でしょう。
一言で言うと、心と体の健康です。
「体調がいい」「気分がいい」という状態。
あるいは調子がいいからこそ感じられる「気持ちがいい」「清々しい」「爽やか」という「気分」「感情」「体感」などは全てセロトニン的幸福です。
出典:精神科医が見つけた3つの幸福
私のイメージでは、何となく、朝一に感じることが多い幸福だと思います。
朝目が覚めたとき、睡眠をしっかりとれていると感じると、疲れも消えていて、日差しがまぶしくても心地よく起きられる、というような感じです。
セロトニン的幸福を感じられるような人は、すべての活動において活発に行動することができます。
そうです、やはりセロトニン的幸福はオキシトシン的幸福にとっても、ドーパミン的幸福にとっても必要となる土台なのです。
逆にセロトニン的幸福がない場合を考えてみるとわかりやすいです。
病気をして、起き上がれない、何もできない、する気も起きない。
こういう状態では、オキシトシン的幸福もドーパミン的幸福も求めようがありません。
「病気になって初めて健康の大切さに気づく」とよく言われますが、まさにそれは、このセロトニン的幸福の大切さを謳ったものです。
オキシトシン的幸福
2つ目の幸福が、つながりによる安心感で得られるオキシトシン的幸福です。
自分1人で、「ああ気持ちいい」「清々しい」「調子がいい」と感じるのが、セロトニン的な幸福。
それに対し、誰かと一緒にいて「楽しい」「うれしい」「安らぐ」のが、オキシトシン的な幸福。
オキシトシン的な幸福には相手が必要です。
(中略)
こうした相手との安定した人間関係によって生まれるプラスの感情、プラスの喜びは、全てオキシトシン的幸福です。
出典:精神科医が見つけた3つの幸福
よく聞くオキシトシン的不幸な話としては、家族のためにと仕事を一生懸命がんばったが、家族や友人関係もかえりみず、ガムシャラに働いていたせいで、いざ定年退職すると家族とも友人とも疎遠で寂しい老後を迎える、というようなものです。
ドーパミン的幸福
3つ目、最後の幸福が、何かを達成したり得ることで感じられるドーパミン的幸福です。
ドーパミン的幸福とは、言い換えると「何かを得る、達成した喜び、幸せ」です。
(中略)
何かを「得る」には、行動や努力が必要です。
頑張らないと昇進したり、会社で認められることはない。
結果を出すためには、いろいろ労力や時間もかかる。
あるいは、何かを買うには、お金がかかります。
つまり、ドーパミン的幸福を得るには、「対価」が必要であるということ。
(中略)
セロトニン的幸福やオキシトシン的幸福などの「静かな幸福」とは異なり、高揚感と興奮がともなう、激しく、大きな幸福だからこそ、多くの人はそこを目指したくなります。
また、ドーパミンは、「もっともっと」の物質です。
(中略)
ドーパミンというのは、「依存症」の物質でもあるのです。
ドーパミン的幸福は少々クセのある幸福です。
まず、対価を支払う必要があるということです。
いや、セロトニンもオキシトシンも対価は必要だと思いますが、ドーパミンはより多くの対価を必要とします。
なぜなら、ドーパミンは何か困難なことを達成したときに分泌されるからです。
対価を支払うとはつまり行動を伴うわけです。
作者はこれをもって、ドーパミン的幸福をDoの幸福と呼んでいます。
一方、セロトニン的幸福とオキシトシン的幸福は、そこにある状態なのでBeの幸福と呼んでいます。
ドーパミン的幸福は多くの場合、高揚感や興奮を伴います。
そして中毒性があるというのも大きな特徴です。
ギャンブルを考えるとわかりやすいですね。
ちょっと当たると、また当てたくなる。
また当たっても以前ほど興奮せず、もっと大当たりが欲しくなる。
もちろん、ドーパミン的幸福が成功のカギになり、結果、良好な成果をもたらすこともあると思います。
要は、ドーパミン的幸福を飼いならせるか、ドーパミン的幸福を得るためにセロトニン的幸福やオキシトシン的幸福を犠牲にしていないかをきちんとチェックすることが重要でしょう。
余談ですが、映画の題材ってほとんどが、ドーパミン的幸福かオキシトシン的幸福を扱っている気がします。
アクション映画やアメリカン・ドリームみたいな成功物語は、ドーパミン的幸福ですね。
一方、恋愛映画やヒューマンドラマはオキシトシン的幸福を主として扱っていることが多いと思います。
たまに健康であることへの感謝的な映画もあるにはあると思いますが、それほど多くはないでしょう。
私の感想
この本の内容は、特に私のようなアラフォー以上のサラリーマンに刺さるのではないかと思いました。
初和世代のサラリーマンは若いころ、「成功=金持ち・出世=ドーパミン的幸福」をモチベーションにガムシャラに働く時期がありました。
しかし、それは「3つのうちの一つ」の幸福であって、すべてではありません。
年を取ってくると感じるのは、健康や人とのつながりは、かけがえのない財産だということ。
若い頃には何もしなくても持っていたので、ついついおろそかにしてしまったり、ありがたみを感じにくいセロトニン的幸福。
結婚・出産のようなイベントで関係ができていると思っても、メンテナンスしないと綻びでいくのがオキシトシン的幸福。
ふと気づくとアラフォーになっていた私には、今しみじみとこの2つの大切さを感じる次第です。
そしてこの本の秀逸な点は、3つの幸福という観点から、これまでの自己啓発で取り上げられていたようなトピックを再整理しているところでしょう。
これまでも感覚的、非科学的に、なんとなく良い、悪いと言われきたことが、3つの幸福の観点から解説されることで、スッと腹落ちする感じです。
以前からお話をしていますが、私は科学的に論拠を述べた著書が大好物なので、この本もとても理にかなっていて素晴らしいと感じました。
今回はお話しできませんでしたが、著書にはどのように3つの幸福を得るかのTo Doが満載です。
ご興味があれば、お手に取ってごらんくださいませ。
^U^
ひとことポイント
・この本を読んでから、常に今なんの幸福が自分に必要かを考えるようになりました
コメント