『ビジネスの未来』から読み解く「高原社会」で生きるヒント

Plateau 06.自己啓発

山口周さんの著書『ビジネスの未来』を読みましたので、感想などを書き記しておきたいと思います。

久しぶりの新刊紹介です。

『ビジネスの未来』の概要

さて、この本には『ビジネスの未来』という深淵かつ漠然としたタイトルがついていますが、どんな内容の本なのでしょうか?

これについては著者の言葉を借りてみましょう。

ビジネスはその歴史的使命をすでに終えているのではないか?

これが、本書執筆のきっかけとなった私の疑問です。

つまり本書は、この疑問に対するさまざまな角度からの考察の結果を記したもの、ということになります。

(略)

答えはイエス。

ビジネスはその歴史的使命を終えつつある。

ということになると思います。

出典:ビジネスの未来

そう、本のタイトルは『ビジネスの未来』ですが、いきなり著者は冒頭で「ビジネスの役割は終わっている」と述べています。

著者は様々な過去の研究や統計データを用いながら、これまでの「ビジネス」はその役割を終えつつあると主張しています。

著者のまとめたサマリーが以下の4点です。

「ビジネスの未来」のサマリー
  • 1.私たちの社会は、明るく開けた「高原社会」へと軟着陸しつつある
  • 2.高原社会での課題は「エコノミーにヒューマニティを回復させる」こと
  • 3.実現のカギとなるのが「人間性に根ざした衝動」に基づいた労働と消費
  • 4.実現のためには教育・福祉・税制等の社会基盤のアップデートが求められる

ざっくり言うと著者は、人類の歴史という大局から見て、今日は「物質的な欠乏を充足させるために文明化をする」というフェーズを終えており、GDPのような単一指標で測る経済成長を目指すようなことに意味がない、まったく新しいフェーズである「高原社会」に差し掛かっているとしています。

「高原」とは、経済成長率が右肩上がりに伸びていた時代と異なり、経済が穏やかな上昇、もしくは維持をしている状態を指します。

そしてこれからの高原社会に必要なのは、「人間性に根ざした衝動」による活動だと説いています。

著者はこれまでの「文明化(=物質的充足)」を求める社会活動を「インストルメンタル(手段的)」と表現し、これから必要な活動の在り方を「コンサマトリー(自己充足的)」にしていく必要があるとしました。

これはつまり、働くことを「明日の寝床を確保するため」ではなく、「楽しいから」やるような世の中にしようということです。

そしてこれを実現するための社会的基盤として、ユニバーサル・ベーシック・インカムの導入も含む3つのイニシアチブ(アクション)を提唱しています。

コンサマトリーな高原社会を成立させるイニシアチブ
  • イニシアチブ1:真にやりたいコトを見つけ、取り組む
  • イニシアチブ2:真に応援したいモノ・コトにお金を払う
  • イニシアチブ3:(1と2を実現するための)ユニバーサル・ベーシック・インカムの導入

『ビジネスの未来』の秀逸な指摘

ここでは、私の「モノの見方」を変えた(=信念/ビリーフ形成に役立った)指摘をいくつかご紹介します。

マーケティングは終わったビジネスの延命措置のためにある?

すでに満ち足りている人に対して「まだこれが足りていないのでは?」とけしかけて枯渇・欠乏の感覚をもたせることができれば、新たに問題を生み出すことで「ゲーム終了」を先延ばしすることができます。

これがマーケティングの本質です。

経営思想家のピーター・ドラッカーは、企業の目的は一つしかなく、それは「顧客の創造」であるとした上で、さらにその活動は「マーケティング」と「イノベーション」の二つに支えられている、と言い切りました。

この言葉自体はよく知られていますが、これを先述した「問題の開発」と「問題の解消」という枠組みで考えてみれば、実は同じことを言っているということがわかります。

つまり「問題の開発」がマーケティングであり「問題の解消」がイノベーションだということです。

出典:ビジネスの未来

これは強烈な指摘ですね。

マーケティングを生業としている人にとっては刺激的な内容です。

人々のニーズには物質的な欠乏以外にも、精神的、心理的な欠乏にたいする安心感もあるはずですので、一概にこれが正しいとは言い切れないと思いますが、マーケティングの存在意義を見つめなおす、本質的な考え方だと思います。

「創造性」は認知ではなく感情に関わる能力

多くの人は、創造性を「認知に関わる能力」と考えています。

だから「○○思考」といったように「認知や思考の技術」として整理・解釈しようとしてしまいます。

けれども、このチクセントミハイの指摘を読むと、実は創造性とは「感情に関わる能力」なのだということが、よくわかります。

創造的な人々は、豊かな「幸福感受性」をもっており、興味や喜びを感じることに関わろうとする一方で、仕事に退屈を感じると「素早く荷物をまとめてその場を立ち去る」のです。

出典:ビジネスの未来

これは私の思考(行動)特性を表しているというか、最後の一文に共感したので挙げました。

そうか、私は豊かな「幸福感受性」を持っているだけであって、決して「ワガママ」ではなかったのか(笑)。

ありがとう、山口先生。

未来のカタチを変えるのは「責任ある消費」

だからこそ、「責任ある消費」という考えが重要になってくるのです。

なぜ「責任」なのかというと、私たちの消費活動によって、どのような組織や事業が次世代へと譲り渡されていくか、が決まってしまうからです。

私たちが、自分たちの消費活動になんらの社会的責任を意識せず、費用対効果の最大化ばかりを考えれば、社会の多様性は失われ、もっとも効率的に「役に立つモノ」を提供する事業者が社会に残るでしょう。

出典:ビジネスの未来

耳が痛い話だなと思うのは、私が街の本屋さんが好きなのですが、それでもよくアマゾンで本を買ってしまうということです。

街の本屋が潰れていくことを嘆きながら、一方で便利なアマゾンで本を購入することに自己矛盾があるなと。

これが「責任ある消費」なのでしょうね。

街の本屋を潰したくなかったら、街の本屋で本を買えと。

はい、すいません。

反省します。

「感情」は生存に必要な、人間にとっての最大の武器

私たち人間が「感情」という機能を獲得したのは、これが生存と繁殖に必須だったからです。

これを逆に表現すればつまり、感情を押し殺すようにしてインストルメンタルな生き様を志向することは、むしろ生物個体としての生存能力・戦闘能力を毀損することになる、ということです。

生きがいも楽しさも感じられない仕事に、給料が高いからという理由だけで携わっているのは、本質的に生命としてのバイタリティを喪失することになるのです。

さらに加えて指摘すれば、そのインストルメンタルな労働観をもつ人によって、不健全な仕事が労働市場から排除されずに残ってしまうという問題もあります。

もし私たちが、自分の本来の感情、幸福感受性に根ざして仕事を選ぶことができれば、私たちの幸福に貢献しない仕事や活動は、社会から消えていくことになります。

なぜなら、私たちの社会には市場原理が働くからです。

ここに、私が「資本主義をハックする」と言っている意味があります。

出典:ビジネスの未来

これはまさに、今、労働市場で現実化している問題ですね。

つまり「感情」に関わらない「論理性」だけの仕事は、どんどんロボットやAIに駆逐されていっていると。

そして最後に人間に残るのは、「感情」に関わる仕事のみだと。

結局、人間を人間足らしめるのは「感情」なんだから、なるべく感情に根ざした活動を仕事にしたいものです。

複雑な問題を解決するためにはシステム思考が欠かせない

変えるべき問題が明確になっているにもかかわらず、何度対処しても大きな変化が起こらないというとき、その問題は「複雑なシステム」によって引き起こされていることがほとんどです。

ここでいう「複雑なシステム」とは「問題を生み出すシステムが開放系になっており、現象として目に見える範囲以上に広範囲かつ多様な因果関係によって引き起こされている問題」という意味です。

出典:ビジネスの未来

物事は複雑に絡み合っていて、表面的な問題にだけ場当たり的に対処しても、また同じ問題が繰り返されるということですね。

私が思うに、これは社会システムもそうなのですが、人間も同じだと思います。

つまり、自己啓発書とか読んで「よし、今日から変わろう!」と決意しても3日後には忘れてしまっているのは、今までのやり方でも生きてこられたという「変化を望まない力」とともに、「原因は表面上の問題以外にも複雑に絡み合っている」という事実があるからでしょう。

だから本当に自分を変えたいなら、真の要因を探したり、全体的に変えるシステム思考的アプローチが必要なわけです。

私の感想

最後に、私の感想をつらつらと書いておきます。

私たちが行動する基盤となる信念には「時代に対してほぼ普遍なもの」と、「時代に適応したもの」がありますが、この本は「時代に適応した信念」を変えるためのものです。

つまり、今という時代をどう考えるかという書籍ですね。

全体的にはやや、まわりくどい(冗長的?)な部分も散見されますが、論理的に説得するために丁寧な解説をしていると感じました。

エビデンスを古今東西の事例から引っ張ってきているところからも、力の入れようがわかります。

ただ、もう少し簡潔にまとめることもできたかなと思います。

著者もたぶん、これを言いたくてしょうがないという主張のオンパレードで、筆が走りまくったのでしょうね。

「コンサマトリーに生きる」ということは堀江さんも常々おっしゃっていて、かつ実践されているので、そういう意味では私には「ホリエモンのように生きよう」というふうにも聞こえました。

ただこれは、物質的に欠乏していない人が言えることだ、とも言えるかなと思います。

世の中から完全に物資の欠乏がなくなってはいないことを考えると、「金持ちの主張」にも聞こえなくもありません。

著者はそのために「ユニバーサル・ベーシック・インカム」の導入もするべきと説いているわけですが。

あとは、マーケティングをゾンビ的なビジネスを延命させるための手法と捉えている節があるので、マーケティング担当者は読んだら怒るかもしれません(笑)。

改めて言えることは、「終わったゲームのレベル上げはやめて新しいゲームを探そう」ということです。

わたくしごとですが、2020年の12月で自分のやっている仕事に一つの区切りがついたので、私のキャリアのタイミング的にはちょうど良い本でした。

私もソーシャルに価値のある、かつ自分の人生にも価値のある活動を、これからはさらに意識していきたいと思っています。

^U^

ひとことポイント

・終わったゲームのレベル上げはやめて新しいゲームを探そう

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