新旧企業の時価総額逆転が示す「戦場」の変遷

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今年に入り、4つの大きな市場(半導体、娯楽、金融、自動車)で新旧プレイヤーの時価総額が逆転しました。

米市場、時価総額の逆転相次ぐ コロナで主役交代加速 半導体・自動車・金融…… - 日本経済新聞
【NQNニューヨーク=松本清一郎】米国株市場で時価総額の歴史的な逆転が相次いでいる。時代の波に乗った新興企業の株価が急伸し、伝統的な名門企業を追い抜くケースが目立つ。8日は半導体のエヌビディアが同業のインテルを上回り、米半導体株で首位が入れ...
企業価値、コロナで一変 リーマン以来の順位激動 チャートは語る - 日本経済新聞
世界の株式時価総額ランキングに「地殻変動」が起きている。1社あたりの順位変動は2008年のリーマン・ショック以来の大きさだ。新型コロナウイルスの広がりが経済の転換を加速させるとみた投資マネーが、次の成長企業を探して急激に動いている。日本企業...
[社説]コロナ後の世界を映す時価総額の逆転 - 日本経済新聞
世界の市場で株式時価総額の逆転が相次いでいる。新型コロナウイルスの感染拡大は、経済や産業の変化を加速させる引き金になった。次の時代をリードしそうな企業が一気に評価を高めて躍進し、既存勢力を追い抜いている。産業の地殻変動を読みとる市場のメッセ...

今回は、新旧プレイヤーの時価総額逆転に見る戦場の変遷について書き記しておきたいと思います。

ちなみに、昨日の日経によると、アリババ傘下のアリペイは米シティグループや三菱UFJフィナンシャル・グループなど3メガ銀行の合計をも上回るそうです。

「アリペイ」経済圏膨張 運営のアント、企業価値16兆円 - 日本経済新聞
中国のIT(情報技術)大手が金融を核に成長している。スマートフォン上で提供する通販や動画配信などのサービスを決済でつなぎ、一大経済圏を作り上げている。データを基に新たな金融サービスにも事業を広げる。海外展開にも積極的で、銀行などの既存プレー...

アメリカとバチバチな感じの中国ですが、サラリーマンとしても1ユーザーとしても投資家としても、今後も両国のプラットフォーマーの動向から目が離せません。

時価総額が逆転した市場

改めて、「半導体」、「娯楽」、「金融」、「自動車」の4つの市場における新旧プレイヤーの時価総額と年初来の増減率を見てみましょう。

出典:日本経済新聞

この中でも3.3倍で群を抜いているテスラの上昇っぷりは、飛ぶ鳥を落とす勢いですね。

新規プレイヤーにおける年初来の増加率は、明らかに新型コロナウィルスの影響が大きいでしょう。

巣ごもりでヒマな時間に投資を始めた人も増えたという報道もありましたが、こうした新規参加者の期待を新規参加企業が背負っているのかもしれません。

創業年も調べてみましたが、伝統的プレイヤーたちはウォルト・ディズニーの1923年から一番新しいインテルでも1968年とどれも50年以上前。

対して新規プレイヤーは一番古いエヌビィディアの1993年から一番新しいテスラの2003年と、Windows95やインターネットが流行り出したちょっと前くらいからの10年間におさまっています。

時価総額の逆転した市場(カッコ内は創業年)
  • 半導体:インテル(1968年) V.S. エヌビディア(1993年)
  • 娯楽:ウォルト・ディズニー(1923年) V.S. ネットフリックス(1997年)
  • 金融:バンク・オブ・アメリカ(1928年) V.S. ペイパル(1998年)
  • 自動車:トヨタ自動車(1937年) V.S. テスラ(2003年)

私の感覚では、エヌビィディアやネットフリックスが1990年代からあることが意外でした。

新規プレイヤーと言ってもそこそこ年を食っています。

主戦場(プラットフォーム)が変わると勝者も変わる

時価総額は逆転しましたが、伝統的な企業は決して努力を怠ったわけでも、優良企業でなくなったわけでもありません。

ただ、時代とともに、戦いの戦場が移り変わってしまっただけなのです。

半導体であれば、かつてのパソコン向けCPUからAI搭載型のデータセンター、ゲーム・コンピューター用GPUへ。

娯楽(映像)で言うと、劇場配給からオンライン配信へ。

金融は店舗型(オフライン)の金融サービスからオンライン金融へ。

自動車はガソリン車から電気自動車へ。

それでも報道やプレゼンテーションを見ている限り、トヨタ自動車の豊田社長が常日頃抱いている危機感はすさまじく、まだまだ戦いは始まったばかりという気がします。

他の分野の伝統的企業も黙ってはいないでしょう。

今回の時価総額の順位変動も、新型コロナウィルスの影響によるデジタル系企業に対する投資家の過度の期待が一因な気もするので、これが常態化するとは言いきれません。

ただ、流れはやはり、次世代の市場を見すえた企業に来ているということは言えるでしょう。

次の戦いを見すえた「生き残りの戦略」を再定義できるか

巨大な企業、成功体験のある企業は、ともすればかつての勝ちパターンから抜け出せないため、新たな戦いが始まっていることに薄々気がついていても、新しい戦場での戦い方になかなか移行できません。

マーケティング近視眼(近視眼的マーケティング)という言葉を生み出したアメリカの経済学者セオドア・レビットは、かつて繁栄していたアメリカの鉄道業界が自動車や航空機などの進展によって衰退へと追いやられた経緯について、「鉄道会社が、自分たちのミッションを人や物を目的地に運ぶことと捉えず、車両を動かすことと定義したことが衰退の要因である。」と述べました。

自分たちの勝ちパターンである製品やサービスにこだわらず、もっと大きな視点で目指すべき姿を見たとき、何をすべきなのか。

それは、主戦場の変更を敏感に感じ取り、自らの過去を否定してでも、新しい一歩を踏み出すということでしょう。

つまり、「アンラーニング」をすることこそが、激動する時代の変化に対応して生きる残る術(すべ)なのです。

これは個人にも言えることで、アンラーニングで過去の自分を否定してでも、新しい自分に生まれ変わることができる人が、次の時代の勝者となるのでしょう。

^U^

ひとことポイント

・アンラーニングで過去の成功を捨てて、新しいステージを目指すようなマインドを養おう

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